👤 こんな方に読んでほしい記事です
- ▶SNSや掲示板で身に覚えのない悪口を書かれた方
- ▶Googleマップなどに悪意ある口コミを投稿された店舗オーナー
- ▶匿名の投稿者を特定して責任を追及したいと考えている方
- ▶泣き寝入りせずに何ができるか知りたい方
ある日突然、自分の名前でSNSを検索したら、まったく身に覚えのない悪口が書かれていた。そんな経験をした方は、残念ながら少なくありません。
法務省の発表によると、2025年に全国の法務局で救済手続きが開始されたインターネット上の人権侵犯事件は1,569件。プライバシー侵害が503件、名誉毀損が348件と、ネット上の誹謗中傷は依然として深刻な社会問題です。
「匿名だから相手が誰かわからない」「書き込みを消したいけどやり方がわからない」「慰謝料は取れるの?」。この記事では、SNSや掲示板で誹謗中傷の被害にあった場合に何をすべきか・どんな法的手段があるか・いくらかかるかを、できるだけ具体的に、わかりやすくまとめました。ひとりで悩まず、まずは全体像を知るところから始めましょう。
この記事でわかること
- ✓誹謗中傷と批判の違い、名誉毀損罪・侮辱罪の境界線
- ✓被害にあったら最初にやるべき3つのこと(時間との勝負)
- ✓X・Instagram・Googleマップ別の削除依頼の出し方
- ✓発信者情報開示請求の費用・期間(30〜70万円・3〜6ヶ月)
- ✓慰謝料の相場と弁護士保険を活用した費用軽減の方法
そもそも「誹謗中傷」とは?名誉毀損・侮辱罪との違い
「誹謗中傷」は法律用語ではなく、法律上問題になるのは 名誉毀損罪と侮辱罪 の2つ。事実の摘示があれば名誉毀損、なければ侮辱が成立します。

「誹謗中傷」という言葉は日常的によく使われますが、実はこれは法律上の正式な用語ではありません。一般的には、根拠のない悪口や嫌がらせを言って相手を傷つける行為の総称として使われています。
一方、法律上で問題になるのは「名誉毀損」と「侮辱」の2つです。この違いを正確に理解しておくことは、後の対処法を考えるうえで非常に重要です。
名誉毀損罪(刑法230条)
名誉毀損罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した」場合に成立します。ポイントは「事実を摘示(ていじ)」している点です。たとえば「○○さんは会社の金を横領している」「○○は不倫している」のように、具体的な事実を示して社会的評価を下げる投稿がこれに該当します。
重要なのは、その事実が本当であっても名誉毀損になりうるという点です。罰則は3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金です。
侮辱罪(刑法231条)
侮辱罪は、事実を示さずに相手を侮辱した場合に成立します。「○○はバカ」「死ね」「キモい」のように、具体的な事実の指摘はないが相手の人格を貶める投稿が典型例です。2022年の法改正で厳罰化され、罰則は1年以下の懲役・禁錮、または30万円以下の罰金に引き上げられました。
この厳罰化の背景には、2020年に女子プロレスラーの木村花さんがSNS上の誹謗中傷を受けて亡くなった痛ましい事件があります。
読者の声
「事実なら書いていい」って思ってました。でも事実でも名誉毀損になるんですか?それじゃ告発系の投稿は全部アウトってことですか?
工藤
そこは多くの方が誤解されてるポイントですね。実は公益性・公共性・真実性の3要件を満たせば違法性が阻却されます。政治家の不正告発などはこれで守られるんです。ただ個人の私生活への言及はほぼアウトと考えてください。
「批判」と「誹謗中傷」の境界線
ネット上の投稿がすべて誹謗中傷になるわけではありません。「批判」は相手の行動や意見に対して根拠をもって検討・反論することであり、社会的に正当な行為です。たとえば「あの店の接客は改善すべきだ」は批判、「あの店の店員は犯罪者だ」は名誉毀損になりえます。境界線は「具体的事実を示して社会的評価を下げているか」「単なる人格攻撃になっていないか」にあります。
名誉毀損にあたりうる投稿の例
「○○は会社の売上金を横領している」→ 具体的事実の摘示+社会的評価の低下
「あの美容室は無免許のスタッフに施術させている」→ 事実の摘示+営業上の信用毀損
「○○は不倫相手と毎晩会っている」→ 私生活上の事実の摘示
侮辱にあたりうる投稿の例
「○○はマジで頭おかしい。生きてる価値ない」→ 事実の摘示なし+人格の否定
「ブス」「デブ」「キモい」等の容姿に対する攻撃
「こいつ本当に使えない。無能の極み」→ 能力の全否定
ご自身のケースが法律上の名誉毀損・侮辱に該当するかどうかの判断は専門的な知識が必要です。少しでも「これは度を超えている」と感じたら、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
誹謗中傷の被害にあったら最初にやるべき3つのこと
①証拠保全(スクショ)→ ②相手に絶対反応しない → ③弁護士に相談。特に ログ保存期間は3〜6ヶ月 なので時間との勝負です。

SNSや掲示板で誹謗中傷を見つけたとき、怒りや不安でパニックになるのは当然のことです。しかし、ここでの初動が後の法的対応を大きく左右します。まず冷静に、以下の3つを順番に行ってください。
STEP 1
証拠保全
最優先・即実行
STEP 2
無反応
エスカレート防止
STEP 3
弁護士相談
時間との勝負
ステップ1:証拠を保全する(最優先)
何よりも先に、投稿のスクリーンショットを撮って証拠を残してください。なぜなら、投稿者が書き込みを削除してしまえば、証拠が消えてしまうからです。また、発信者情報開示請求や損害賠償請求を行う際には、投稿の存在を証明する証拠が不可欠です。
スクリーンショットを撮るときは、以下の情報がすべて画面に含まれるように注意してください。
スクリーンショットに含めるべき情報
投稿のURL(ブラウザのアドレスバーが見える状態で撮影)
投稿者のアカウント名・ユーザーID
投稿日時
投稿内容の全文
スマートフォンでも撮影は可能ですが、できればPC(パソコン)での保存を推奨します。スマホだとURLが省略表示されることが多く、裁判の証拠として不十分になる場合があるためです。URLが見切れている場合は、アドレスバーをタップしてURL全体を表示した状態でもう1枚撮っておきましょう。
さらに万全を期すなら、Wayback Machine(ウェブアーカイブ)への保存、ページ全体のPDF保存、動画キャプチャによる記録といった方法も併用すると安心です。第三者が運営するサーバーや、ブラウザの印刷機能による日時付きPDFは、裁判で「この証拠は本当にこのURLの投稿を記録したものか」が争点になった際の強力な裏付けになります。
ステップ2:絶対に相手に反応しない
誹謗中傷を見つけると、つい反論したくなるかもしれません。しかし、相手に直接返信したり、反論の投稿をすることは絶対に避けてください。理由は3つあります。
第一に、相手が反応を楽しんでいる場合、やり取りがエスカレートして「炎上」状態になる可能性があります。第二に、あなた自身の発言が感情的になりすぎると、逆に相手から名誉毀損で訴えられるリスクがあります。第三に、投稿者が証拠隠滅のために投稿を削除してしまう可能性が高まります。
ステップ3:弁護士に相談する(時間との勝負)
証拠を残したら、できるだけ早く弁護士に相談してください。これは「余裕があれば」ではなく、「時間との勝負」です。
ログの保存期間は3〜6ヶ月
投稿者を特定するための発信者情報開示請求には、プロバイダが保存しているアクセスログが必要です。このログの保存期間は通常3〜6ヶ月程度で、期間を過ぎるとデータが消えてしまい、投稿者を特定することが不可能になります。投稿を見つけてから弁護士に相談するまでの時間が長くなるほど、法的手段が取れなくなるリスクが高まります。
「弁護士に相談するとお金がかかるのでは…」と不安な方もいるかもしれません。初回無料相談を実施している法律事務所も多いですし、弁護士保険(弁護士費用保険)に加入していれば相談料や着手金の負担を大幅に軽減できます。
投稿の削除を求める方法(プラットフォーム別ガイド)
2025年4月施行の 情報流通プラットフォーム対処法 により、大規模PF事業者には削除対応の迅速化が義務化。各PFの報告フォームから依頼可能です。

誹謗中傷の投稿を発見したら、証拠を保全したうえでプラットフォームの運営会社に削除を依頼することができます。2025年4月に施行された「情報流通プラットフォーム対処法」(旧・プロバイダ責任制限法)により、大規模プラットフォーム事業者には削除対応の迅速化が義務づけられました。Google、LINEヤフー、Meta(Instagram/Facebook)、TikTokなどが対象です。
X(旧Twitter)での削除依頼
問題の投稿を表示し、右上の「…」メニューから「ポストを報告」を選択します。報告カテゴリで「嫌がらせや暴力的な言論」や「個人情報」など、該当する項目を選んで申請します。Xの運営が規約違反と判断すれば、投稿の削除やアカウントの凍結が行われます。
ただし、Xの運営の判断基準は独自のもので、法的な名誉毀損に該当するケースでも削除されないことがあります。特にXは「表現の自由」を重視する傾向が強く、暴言レベルの投稿でも「意見表明」として削除されないケースが多い印象です。報告を行っても「ルール違反は確認できませんでした」という返答が返ってくることも珍しくありません。
Xへの報告で削除されなかった場合は、弁護士を通じて裁判手続き(仮処分)による削除を検討します。Xの運営元は米国企業ですが、日本の裁判所を通じた仮処分命令はX社に対しても効力を持ちます。2022年以降、日本の裁判所がX社に対して削除や情報開示を命じた事例は複数あり、法的手続きを取れば対応してもらえる可能性は十分にあります。
Instagram / Facebookでの削除依頼
投稿またはコメントの横にある「…」メニューから「報告」を選択します。「いじめまたは嫌がらせ」「詐欺または偽りの情報」など該当するカテゴリを選んで送信します。Meta社は24時間以内に受付確認のメールを送信する体制を取っていますが、実際の対応には数日〜数週間かかることがあります。
InstagramやFacebookの場合、ストーリーズやDM(ダイレクトメッセージ)での誹謗中傷も増えています。ストーリーズは24時間で消えてしまうため、発見したらすぐにスクリーンショットを撮ることが特に重要です。また、DMでの嫌がらせは「公然と」行われたものではないため名誉毀損罪が成立しにくい場合がありますが、脅迫罪やストーカー規制法など別の法律で対応できるケースもあります。どの法律が適用できるかは弁護士の判断が必要です。
Googleマップの口コミ削除
飲食店や美容室のオーナーが特に困るのが、Googleマップへの悪意ある口コミです。Googleビジネスプロフィールにログインし、該当の口コミの横にある「旗」マークから「不適切な口コミとして報告」します。報告後はGoogle側の審査に委ねられ、通常1〜2週間程度で結果が出ます。
ただし、Googleの削除基準は「Googleのポリシーに違反しているかどうか」であり、名誉毀損に該当するかどうかとは基準が異なります。たとえば「この店のラーメンはまずい。二度と行かない」という口コミは、事業者にとっては営業妨害に感じられるかもしれませんが、Googleのポリシー上は「個人の意見」として削除されないケースがほとんどです。一方、「この店の店主は前科者だ」のように具体的な虚偽事実を含む投稿であれば、ポリシー違反として削除される可能性が高まります。
5ちゃんねる等の匿名掲示板での削除依頼
5ちゃんねるの場合、各板に設置されている「削除依頼板」から削除依頼を行います。ただし、削除依頼をした事実自体が公開される仕組みになっているため、かえって注目を集めてしまう「ストライサンド効果」のリスクがあります。「削除依頼が出ている=効いている」と判断されて、さらに書き込みが増えるケースも珍しくありません。匿名掲示板への対応は慎重に進めるべきで、弁護士への相談を強くおすすめします。
削除依頼が通らなかった場合
各プラットフォームへの削除依頼が認められなかった場合でも、裁判所を通じた「仮処分」という手続きで削除を求めることが可能です。裁判所が権利侵害を認めれば、プラットフォーム事業者に対して削除命令が出されます。弁護士に依頼すれば、申立書の作成から裁判所でのやり取りまで代行してもらえます。
重要:削除の前に必ず証拠を保全
削除依頼が成功して投稿が消えると、発信者情報開示請求や損害賠償請求に必要な証拠も消えてしまいます。削除依頼を出す前に、必ずスクリーンショットやページの保存をしておいてください。
発信者情報開示請求の手続き・費用・期間
2022年10月の改正で 1つの手続きで一体的に開示 可能に。費用30〜70万円、期間3〜6ヶ月が目安です。

匿名の投稿者を特定するための法的手続きが「発信者情報開示請求」です。損害賠償請求や刑事告訴を行うには、まず「誰が書いたのか」を突き止める必要があります。「匿名だから泣き寝入りするしかない」と思い込んでいる方も多いですが、法律上はプロバイダに対して投稿者の情報を開示させる仕組みが整備されており、正しい手続きを踏めば相手を特定することは十分に可能です。
発信者情報開示請求の仕組み
インターネットの仕組み上、投稿者を特定するためには2つの事業者から情報を取得する必要があります。
まず、コンテンツプロバイダ(SNSや掲示板の運営会社)に対して投稿に使われたIPアドレスとタイムスタンプの開示を請求します。次に、そのIPアドレスからアクセスプロバイダ(NTT、KDDI、ソフトバンクなどのインターネット接続事業者)を特定し、契約者の氏名・住所などの情報の開示を請求します。
以前はこの2段階をそれぞれ別の裁判手続きで行う必要があり、合計で2〜3回の裁判が必要でした。しかし、2022年10月の改正プロバイダ責任制限法により「発信者情報開示命令」が新設され、1つの手続きで一体的に開示を求めることが可能になりました。この改正により、手続きの期間が大幅に短縮されています。
開示請求にかかる費用と期間の目安

発信者情報開示請求を弁護士に依頼した場合の費用は、一般的に以下のとおりです。
| 費用の内訳 | 目安金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 弁護士への着手金 | 20万〜40万円 | 事務所により異なる |
| 弁護士への成功報酬 | 10万〜30万円 | 開示が認められた場合 |
| 裁判所への申立費用 | 数千円〜数万円 | 印紙代・郵券代 |
| 合計の目安 | 30万〜70万円 | 事案の複雑さによる |
「30万円以上かかるのか…」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、弁護士保険に加入していれば、弁護士費用の全部または一部を保険でカバーできるケースがあります。月々の保険料は数百円〜数千円程度なので、いざというときの備えとして検討する価値があります。
発信者情報開示命令(新設の一体的手続き)を利用した場合、申立てから投稿者の特定まで約3〜6ヶ月が一般的です。海外事業者(X、Meta等)が相手の場合はさらに時間がかかることがあります。
繰り返しになりますが、プロバイダのログ保存期間は3〜6ヶ月です。投稿を発見してから弁護士への相談が遅れると、ログが消えて開示請求自体が不可能になります。「おかしいな」と思ったら、まず弁護士に相談することが最も重要です。
投稿者を特定した後の法的措置(慰謝料請求・刑事告訴)
民事の損害賠償請求と刑事告訴は 両方並行可能。慰謝料相場は10万〜100万円、刑事告訴は強い抑止力になります。

発信者情報開示請求によって投稿者が特定できたら、次は法的責任を追及する段階に入ります。取れる手段は大きく分けて「損害賠償請求(民事)」と「刑事告訴」の2つがあり、両方を同時に行うことも可能です。
損害賠償請求(民事):慰謝料の相場は?
民事での損害賠償請求は、相手の不法行為(名誉毀損・侮辱・プライバシー侵害など)によって受けた精神的苦痛に対して金銭の支払いを求めるものです。慰謝料の相場は事案によって大きく異なりますが、一般的な目安は以下のとおりです。
| 被害の類型 | 慰謝料の相場 |
|---|---|
| 個人に対する名誉毀損 | 10万〜50万円 |
| 個人に対する侮辱・誹謗 | 数万〜30万円 |
| 事業者に対する名誉毀損(口コミ被害等) | 50万〜100万円 |
| プライバシー侵害(個人情報の暴露等) | 10万〜100万円 |
注意していただきたいのは、慰謝料とは別に、発信者情報開示請求にかかった弁護士費用の一部を相手に請求できる場合があるという点です。裁判例では、開示費用を損害の一部として認めるケースが増えています。ただし全額が認められるとは限らないため、弁護士に見通しを確認しておきましょう。
まずは弁護士から相手に内容証明郵便を送り、示談交渉を行うのが一般的です。内容証明郵便とは、「いつ・誰が・誰に・どんな内容の文書を送ったか」を郵便局が公的に証明してくれるものです。弁護士名義で送ることで、相手に「法的手段を取る意志がある」ことを明確に伝えられます。
示談交渉では、相手方が自分の投稿を認めて慰謝料の支払いに応じるケースも少なくありません。特に一般人同士のトラブルでは、裁判になることを避けたいという心理が働き、示談で解決に至ることが多いです。示談が成立した場合は示談書を作成し、再発防止(同様の投稿をしないこと)の約束も含めて書面化しておきます。
相手が交渉に応じない場合、または金額面で折り合わない場合は、裁判(民事訴訟)に移行します。裁判には半年〜1年以上かかることもありますが、判決が出れば強制執行(給与や預金の差し押さえ)も可能です。
刑事告訴:相手に前科をつけたい場合
誹謗中傷の内容が悪質な場合、警察に刑事告訴することも選択肢の一つです。名誉毀損罪・侮辱罪はいずれも「親告罪」であり、被害者が告訴しなければ捜査が始まりません。
告訴状を警察署に提出し、受理されれば警察が捜査を行い、検察庁に送致されます。検察官が起訴すれば刑事裁判となり、有罪になれば相手に前科がつきます。ただし、すべての告訴が受理されるわけではなく、証拠が十分であること、違法性が明確であることが求められます。弁護士に告訴状の作成を依頼すると、受理されやすい形で書面を整えてもらえます。
刑事告訴のメリットは、加害者に対する強い抑止力になる点です。「前科がつくかもしれない」というプレッシャーは、示談交渉を有利に進める材料にもなります。実際には、告訴を受けた加害者が示談に応じ、被害者が告訴を取り下げる形で解決するケースも多く見られます。
一方で、刑事告訴には時間と手間がかかります。警察の捜査は数ヶ月以上かかることがあり、不起訴(検察官が起訴しないと判断すること)になる可能性もゼロではありません。費用対効果を含め、弁護士と相談のうえ方針を決めることが大切です。
損害賠償と刑事告訴は両方できる
民事の損害賠償請求と刑事告訴は別の手続きなので、両方を並行して進めることが可能です。ただし、どちらにも費用と労力がかかるため、事案の内容や被害の程度を踏まえて弁護士と相談のうえ判断しましょう。
誹謗中傷の実例から学ぶ「認められるケース・認められないケース」
具体的事実の摘示+社会的評価の低下があれば認められやすく、単なる感想や意見 は認められにくい傾向があります。

「自分の場合は法的措置が取れるのだろうか?」と不安な方のために、開示請求や損害賠償が認められやすいケースと認められにくいケースの傾向を整理します。ただし、最終的な判断はケースバイケースであり、ここに記載するのはあくまで一般的な傾向です。
認められやすいケース
具体的な事実を示して社会的評価を下げている:「○○は横領している」「○○は前科がある」など、虚偽の事実を公然と述べているケース
個人情報を無断で公開している:実名、住所、電話番号、勤務先、顔写真などを本人の同意なく晒しているケース
執拗な繰り返し:同一人物から何度も嫌がらせの投稿がされているケース。悪質性が認められやすい
明らかな侮辱表現:「死ね」「消えろ」「ゴキブリ」など、社会通念上許容されない表現を含むケース
認められにくいケース
意見・感想の範囲にとどまる投稿:「あの店のラーメンはおいしくなかった」「○○さんの意見には賛成できない」など、個人の感想に過ぎない場合
公益性・公共性が認められる場合:政治家の不正を指摘する、企業の違法行為を告発するなど、公共の利益にかなう投稿は名誉毀損の違法性が否定される場合がある
特定の個人を指していない投稿:「最近の若者は…」のように抽象的で、特定の個人を名指ししていない場合
口コミ・レビュー:「星1つ。接客が悪かった」程度の口コミは、たとえ事業者にとって不快であっても、表現の自由の範囲として削除が認められにくい傾向があります
読者の声
自分のケースが認められるかどうか、自分で判断するの難しそう…。境界線あいまいですよね。
工藤
そのとおりです。同じ表現でも文脈で判断が分かれます。迷ったら必ず弁護士に投稿の現物を見せて判断してもらってください。多くの法律事務所が初回無料相談を実施しているので、まずは気軽に相談するのが一番です。
まとめ:泣き寝入りしない。匿名でも法的責任は追及できる
「匿名だから何を書いても大丈夫」、そんな時代はすでに終わっています。法改正によって手続きは以前より簡素化・迅速化されており、匿名の加害者を特定して法的責任を追及するハードルは確実に下がっています。
一方で、時間が経つほどログが消え、対応が困難になるのも事実です。「もう少し様子を見よう」と思っているうちに手遅れにならないよう、おかしいと感じたらすぐに弁護士に相談することが最善の対策です。
この記事のポイント
- 誹謗中傷を見つけたら、まずスクリーンショットで証拠を保全する
- 相手に反応せず、できるだけ早く弁護士に相談する(ログ保存期間は3〜6ヶ月)
- プラットフォームへの削除依頼は証拠保全の後で行う
- 匿名の投稿者も発信者情報開示請求で特定可能
- 2022年の法改正で開示請求が1つの手続きで完了するように
- 投稿者特定後は慰謝料請求10万〜100万円や刑事告訴が可能
- 弁護士費用30万〜70万円。弁護士保険で負担を軽減できる
費用のハードルを下げる「弁護士保険」という選択肢
「弁護士費用が30万〜70万円もかかるなんて、とても払えない」、そう感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。実際、費用面の不安から法的措置を断念してしまう方は少なくありません。
そこで検討していただきたいのが「弁護士保険(弁護士費用保険)」です。月々わずか数百円〜数千円の保険料で、いざ法的トラブルに巻き込まれた際の弁護士への相談料や着手金、報酬金などを保険でカバーすることができます。誹謗中傷に限らず、日常のさまざまな法律トラブルに対応できるため、「転ばぬ先の杖」として加入しておく価値があります。
特にSNSを日常的に利用している方、店舗を経営していてネット上の口コミが気になる方は、誹謗中傷の被害に遭うリスクが決してゼロではありません。被害にあってから慌てるのではなく、平時から備えておくことが、いざというときの冷静な判断と迅速な対応を可能にします。
誹謗中傷に関する相談窓口
公的な相談窓口一覧
違法・有害情報相談センター(総務省委託事業):https://www.ihaho.jp/
法テラス(日本司法支援センター):0570-078374
インターネット人権相談(法務省):https://www.jinken.go.jp/
警察相談専用電話:#9110
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工藤 辰浩
リーガルベスト代表 / 弁護士保険ミカタ正規代理店
リクルート在籍中に「世の中の負を解決したい」という想いを抱き、2017年に東京で弁護士保険代理店リーガルベストを創業。以来8年間で400名以上のお客様の弁護士保険相談に伴走。多くの弁護士セミナーへの参加、30名以上の弁護士との交流を通じて培った知見をmomegoto.jpで発信しています。
免責事項:本記事は弁護士保険代理店リーガルベストが、一般的な法律情報の提供および弁護士保険代理店としての知見共有という位置づけで作成しています。個別の事案に関する法的判断が必要な場合は、弁護士にご相談ください。記事内容は2026年4月時点の公開情報に基づいており、今後の法改正等により内容が変更される場合があります。

