👤 こんな方に読んでほしい記事です
- 経営・管理ビザでの起業・在留を検討している方、または既に保有している方
- 厳格化のニュースで自分や知人への影響が気になる方
- 外国人の経営者・取締役を雇用している、または採用予定の企業の人事・法務担当者
- 「ペーパーカンパニー摘発」のニュースで何が違法なのかを正確に知りたい方
2026年5月8日、TBS NEWS DIGが衝撃的な独自報道を伝えました。2025年10月に取得要件が厳格化された在留資格「経営・管理」をめぐり、厳格化後の新規申請件数が、厳格化前と比べおよそ96%減っていたことが法務省関係者への取材で判明。月平均およそ1,700件あった新規申請が、厳格化後の5か月間ではおよそ70件まで激減し、許可されたのは「上場企業の役員クラスの人物が多い」とされます。一方、長年日本で事業を続けてきた外国人経営者からは「資本金の引き上げで帰国を迫られかねない」という不安の声も上がっています。
背景にあったのは、ペーパーカンパニーを使った在留資格の不正取得、医療保険制度の悪用、SNSでの「経営・管理ビザ取得指南」拡散といった深刻な制度悪用の実態でした。2024〜2025年には京都府警・神奈川県警など摘発事例も相次ぎ、これまでグレーゾーンと呼ばれてきた領域に明確な「違法」のラインが引かれました。「あなたが今やっていること、これからやろうとしていることは法律的に本当に大丈夫か」という問いが、4万1,600人の経営・管理ビザ保有者と、その家族・雇用先企業に突きつけられています。
この記事では、弁護士保険代理店として8年間で400名以上の法的トラブル相談に伴走してきた立場から、96%減の数字の意味、厳格化の背景、5つの新要件、違反になる7つの典型ケース、入管法70条・74条の6の刑事責任、ブローカー・名義貸しのリスク、3年経過措置の落とし穴、健全な事業者の備えまで、実務視点で整理します。
この記事でわかること
- ✓月1,700件→70件へ激減した経営・管理ビザの数字の意味
- ✓ペーパーカンパニー・医療悪用・SNS指南という厳格化の背景
- ✓資本金3,000万円・常勤雇用・日本語B2の5つの新要件
- ✓違反になる7つの典型ケースと入管法70条・74条の6の刑事責任
- ✓既存保持者の3年経過措置と健全な事業者の備え
新規申請が96%減、月1,700件から70件へ激減した数字の意味

2025年10月16日施行の改正で、新規申請が月1,700件→70件へ激減。許可されたのは「上場企業の役員クラスが多い」(法務省関係者)。
新規申請が月1,700件→70件へ
2026年5月8日にTBS NEWS DIG(JNN)が独自報道として伝えた数字は、極めてインパクトのあるものでした。厳格化前の5か月間で月平均約1,700件あった新規申請が、厳格化後の5か月間では約70件まで減少。減少率は実に96%に達します。
厳格化前(月平均)
約1,700件
2025年5月〜9月
厳格化後(月平均)
約70件
2025年10月〜2026年3月
減少率
▲96%
事実上の門前払い
許可されたのは「上場企業の役員クラス」のみ、既存4万1,600人に動揺
法務省関係者によれば、厳格化以降に新たに申請して許可された人物の特徴は「上場企業の役員クラスが多い」。改正後の新基準が「資本金3,000万円以上」「常勤職員1名以上」「日本語B2」「事業計画の専門家確認」というかなりハードな水準で揃えられたためで、個人事業主が小資本で起業する従来のパターンは事実上できなくなりました。一方、長年事業を営んできた外国人経営者(全国で約4万1,600人規模)からは不安の声が上がっています。資本金を500万円から3,000万円へ引き上げ、新たに常勤職員を1名雇用するのは中小規模事業者には極めてハードルが高いからです。2025年10月16日時点で在留している方には2028年10月16日までの3年間の経過措置がありますが、3年経過後の更新では新基準が必須となるため、実質的に3年以内に新基準体制を整えなければビザ更新ができなくなる可能性があります。
なぜ厳格化されたのか、ペーパーカンパニー・医療悪用・SNS指南という背景

背景は①ペーパーカンパニー乱立、②高額医療タダ乗り、③SNSでの取得指南拡散。「お金で買えるビザ」と揶揄された制度の信頼回復が目的。
背景1:ペーパーカンパニーの乱立
厳格化の最大の引き金が、実態のないペーパーカンパニーを使った在留資格の不正取得の増加です。旧制度の資本金500万円という基準は長らく変更されず、円安進行で国際的に低い水準となり「お金で買えるビザ」と揶揄される状況が生まれていました。法人登記だけ形式的に行い実態なし、資本金500万円を借金で一時的に揃えて登記後すぐ返済、ひとつのフロアに10社以上が登記された「ペーパーカンパニービル」、ブローカーが会社設立から事業計画書作成・ビザ申請まで一括代行といった不正パターンが横行。「ビザブローカー」は一連の手続きを請け負い、一人当たり数百万円の報酬を得ていたとされます。
背景2:医療保険制度のタダ乗り問題
もう一つの深刻な背景が、日本の公的医療保険制度の悪用問題です。経営・管理ビザを取得すれば、本人と家族滞在ビザの家族が日本の健康保険制度に加入でき、3割負担で高度医療を受けられます。産経新聞は2025年3月16日に「『日本に会社』で医療天国」と評し、中国人富裕層に日本への移住を斡旋する業者の存在を指摘。日本で高額医療を受けた後、保険料を滞納したまま帰国するケースも報告されました。
背景3:中国SNSでの「ビザ取得指南」拡散
中国のSNS上では「日本語不要」「民泊が簡単」「経営・管理ビザの取り方完全マニュアル」などの情報が拡散し、本来の制度趣旨から逸脱した取得手段として広まっていました。読売新聞は2025年2月28日、大阪市内の特区民泊のうち、中国人または中国系法人が運営している施設が41%を占めると報道。民泊経営が在留資格を得る手段として利用されている実態が浮き彫りになりました。
背景4:実際の摘発事例が相次いだ
こうした状況を受けて2024〜2025年にかけて摘発が相次ぎました。2024年11月の京都府警(無資格コンサル男+中国籍3名のペーパーカンパニー摘発)、2025年7月の神奈川県警(スリランカ人ブローカー逮捕)。さらに参政党による国会質問主意書も提出され、政治的にも対応が急務となりました。これを受けて政府は2025年10月16日施行の省令改正で、経営・管理ビザを「量から質へ」と明確に舵を切ったのです。事業実態のない名目上の起業家は排除し、本当に日本で事業を営む意思と能力を持つ起業家を歓迎するという、国家戦略の転換を象徴するメッセージといえます。
5つの新要件、資本金3,000万円・常勤雇用・日本語B2・専門家確認・実体

5つの新要件:①資本金3,000万円(従来500万円)、②常勤職員1名以上、③日本語B2(JLPT N2)相当、④事業計画の専門家確認、⑤実質的な経営活動。要件は「AND条件」。
新要件1:資本金3,000万円以上(6倍に厳格化)
最もインパクトの大きい変更がこれです。これまで500万円以上とされていた資本金等の要件が、3,000万円以上へと6倍に厳格化されました(改正基準省令)。さらに資本金の出所についても審査が厳しくなり、振込記録、契約書、送金元、出資者の属性など、資金がどこから来たのか明確に示すことが必須に。見せ金や一時的な貸付を偽装した資本金など、これまで発生しやすかった不正を排除する狙いです。
新要件2:常勤職員1名以上の雇用
新要件では、日本国内で常勤職員1名以上を必ず配置することが明文化されました。対象は日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の在留資格を持つ方に限定。「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」「留学」など他の就労ビザ・在留資格をもつ外国人は、いくらフルタイム雇用しても「常勤職員」としてカウントされません。これは「外国人だけの会社」を排除し、日本社会との接点を持つことを義務付ける措置です。
新要件3:日本語能力B2(JLPT N2)相当
日本語能力要件として、申請者または常勤職員の少なくとも1名が、JLPT N2以上、BJT400点以上、20年以上の日本在留、日本の大学等卒業、日本の義務教育修了+高校卒業のいずれかを満たす必要があります。申請者本人が満たさなくても、要件を満たす常勤職員を雇用すればクリア可能。なお日本語能力要件の「常勤職員」は雇用要件と異なり「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザ外国人も含まれます。
新要件4:事業計画書の専門家確認
提出する事業計画書について「具体性、合理性が認められ、かつ、実現可能なもの」であることを、経営の専門家が評価・確認することが求められます(改正施行規則)。施行日時点で評価・確認を行える専門家は、①中小企業診断士、②公認会計士、③税理士の3資格に限定。事業計画の妥当性・実現可能性を客観的に評価し、その確認結果を文書として提出する必要があります。
新要件5:実質的な経営活動の関与
業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合、経営・管理ビザに該当する活動とはみなさないことが明文化されました。業務の大半を外部委託し本人が日常的な経営活動を行っていない、事業内容や財務状況を理解していない、名義上の経営者として形式的に在籍しているだけ、自宅を事業所と兼ねているといったケースが問題となります。単に出資者や名義上の代表者として在籍するだけでは不十分です。
「OR条件」から「AND条件」へ、最大の構造変化
これまで経営・管理ビザでは「資本金500万円以上」または「常勤職員2名以上」のいずれかを満たせば申請可能でした(OR条件)。しかし新制度では、「資本金3,000万円以上」と「常勤職員1名以上」の両方を満たさなければ申請できません(AND条件)。これまで「一人社長(資本金500万円・雇用ゼロ)」でも許可されていましたが、今後は「3,000万円の資本金」と「正社員1名の雇用」の両方をクリアしなければならないという、根本的な構造変化が起きたのです。
これから「違反」になる7つの典型ケース

違反になる典型7ケース:①ペーパーカンパニー、②虚偽の事業計画書、③名義貸し、④資本金の見せ金、⑤バーチャルオフィス、⑥業務丸投げ、⑦更新時の虚偽説明。すべて入管法70条の対象。
ケース1:実態のないペーパーカンパニー
会社登記だけ形式的に行い、実際には事業活動を行っていない、または極めて限定的なケースです。今回の厳格化で最も重点的にチェックされ、事務所に什器・通信設備・人員の実態がない、契約書・請求書・売上記録がない、銀行口座に事業活動を示す入出金がない状態が典型です。
ケース2:虚偽の事業計画書・売上報告書
架空の取引先、実現性のない売上見込み、根拠のない収益モデルなどを記載した事業計画書を提出するケース。新要件で専門家確認が義務付けられたためチェックが格段に厳しくなりました。収益見込みの根拠不明、競合比較や差別化が抽象的、人員計画・投下総額・運転資金の整合が取れていない、計画とエビデンスの対応関係が不明瞭、更新時に「前年計画」と「実績」が乖離といったパターンが虚偽と判断されやすいです。
ケース3:名義貸し(実質的な経営者が別人)
申請人本人が形式的な代表者として登記されているだけで、実質的な経営者は別人(多くはブローカーや別の在留資格保有者)というケース。新要件5「実質的な経営活動の関与」に明確に違反します。申請人が事業内容を理解していない、財務状況・取引先・従業員数を把握していない、通帳・印鑑を本人が管理していない、本人がほとんど日本に滞在していないなどが典型的な兆候です。
ケース4:資本金の「見せ金」(マネーロンダリング懸念)
3,000万円の資本金を一時的に借金で揃えて登記し、登記後すぐ返済してしまうケース。新要件では資金の出所まで厳格にチェックされるため、見せ金は容易に発覚します。留学生がアルバイトのオーバーワークで形成した資金を元手に起業するケースもありますが、入管法違反で貯めたお金で経営・管理ビザを取らせることはできません。
ケース5:バーチャルオフィス・自宅兼事業所/ケース6:業務委託への丸投げ
新要件では、バーチャルオフィスの使用は原則として認められず、自宅を事業所と兼ねることも原則として認められなくなりました。レンタルオフィスを「住所だけ」で使用、居住用マンションを事業所として申請、複数申請者が同じ住所(=ペーパーカンパニービル)を使用といったケースは違反対象です。事業所は単一の経営主体が一定区画で継続的に事業を営む場であり、人員と設備を伴う使用実態が求められます。
また業務の大半を外部委託し、申請人本人が日常的な経営活動を行っていないケースも違反です。営業・経理・人事すべてを外部委託、本人は名義上の代表者として書類にサインするだけ、取引先との交渉や採用・人事評価に関与していない状態は典型的な違反パターン。「経営者」と認められるには、日々の経営判断・事業運営に主体的に関わる必要があります。
ケース7:更新時の虚偽説明・不利益事実の隠蔽
2025年7月10日以降、経営・管理ビザの更新時には「直近の在留期間における事業の経営又は管理に関する活動内容を具体的に説明する文書」の提出が必須となり、過去の不正確な説明、業績悪化の隠蔽、休眠状態の隠匿などが入管にバレるリスクが格段に高まりました。税金・社会保険料(公租公課)の納付状況も厳しく確認され、未納があれば「信用がない」と判断されます。
入管法70条・74条の6で問われる刑事責任、3年以下の懲役・300万円以下の罰金

主な刑事責任:①在留資格等不正取得罪(入管法70条1項2号の2)、②営利目的不正取得助長罪(74条の6)。いずれも3年以下の懲役・300万円以下の罰金。退去強制対象にもなる。
罪1:在留資格等不正取得罪(入管法70条1項2号の2)・罪2:営利目的助長罪(74条の6)
経営・管理ビザ違反で適用される主な罪は2つあり、いずれも3年以下の懲役・300万円以下の罰金(併科可)と同等の重さです。1つは外国人本人を対象とする在留資格等不正取得罪(70条1項2号の2)で、虚偽申立・不利益事実の秘匿・虚偽文書の提出など不正行為一切が含まれ、付随処分として在留資格取消(22条の4)・退去強制(24条)が科されます。
東京地裁平成25年12月3日判決では、「偽りその他不正の手段」とは「故意をもって行う虚偽の申立て、不利益事実の秘匿、虚偽文書の提出等の不正行為の一切をいう」と判示。不正が軽微でも、不作為によるものでも罰則の対象となります。営利目的助長罪(74条の6)は2014年改正で導入され、ブローカー・無資格代行業者・悪質な士業だけでなく、申請を受任した行政書士や弁護士、雇用先の経営者・人事担当者、ビザのアドバイスをした友人・知人まで処罰対象。実態のない会社設立、虚偽の事業計画書作成、名義貸し斡旋などが具体的な行為類型です。
罪3:司法書士法違反・行政書士法違反、付随する不利益処分
無資格で会社設立の登記申請書とビザ申請書を作成し、申請自体は本人にやらせるという手法で司法書士法違反・行政書士法違反として逮捕されるケースが後を絶ちません。2024年11月の京都府警の摘発事例(後述)もこの法違反容疑です。
刑事罰だけでなく、外国人本人には在留資格の取消(入管法22条の4)、退去強制(24条)、退去後10年間の上陸拒否、永住許可申請の事実上の不可能化、家族滞在ビザの連動取消といった不利益処分が下されます。「バレないだろう」は通用しません。発覚経路は入管当局の後追い調査・警察の職務質問・税務/労務当局の調査・通報・更新時の活動内容説明文書での矛盾・公租公課の未納記録など多岐にわたり、AI・データマッチングによる不正検出も進む見通しです。
仲介業者・ブローカー・名義貸しのリスク、摘発事例から学ぶ

「100〜300万円でビザ取得代行」を持ちかける業者はほぼ全員違法。乗ると本人もブローカーも逮捕される。最近の摘発事例で構造が明らかに。
2つの摘発事例から見える構造
京都府警(2024年11月)では、無資格コンサルタント業を名乗る男と中国籍の男女ら3名が司法書士法違反の疑いで逮捕。2023年夏から秋にかけて約30社以上のペーパーカンパニーを設立し、登記申請書とビザ申請書の作成で数百万円の報酬を受領、これらの法人口座の一部が特殊詐欺事件の被害金の振込先として使用された実態も判明しました。「トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)」関係も指摘されています。神奈川県警(2025年7月)では、スリランカ人のモハメド・イルファン容疑者を出入国管理法違反容疑で逮捕。自らが経営する自動車販売会社を含む複数のペーパー会社を活用し、虚偽の決算書を入管当局に提出、実態のない会社にスリランカ人を「経営者」として据えて在留資格を不正取得させていました。特定国出身のブローカーが同国出身者を組織的に勧誘する構造が明らかになった事件です。
ブローカーの「相場」と申請取次者の責任
業界実態として、外国人エージェントや仲介人がビザ申請代行として提示する報酬は1〜3万ドル(100〜300万円)程度。料金が極端に高い、「事業計画書も全部こちらで作ります」「資本金も用意します」と「全部丸投げOK」を売りにしている業者は、ほぼ確実に違法な手法を含むと考えるべきです。入管法74条の6により、申請を受任した行政書士や弁護士、その他の申請取次者も処罰対象。「ちょっと知り合いに頼まれて手伝っただけ」「報酬は受け取っていない」という言い訳が通るかは検察・裁判所の判断次第です。
名義貸しを依頼された側のリスク
「日本人として代表取締役の名義だけ貸してくれれば、月10万円払う」というオファーを受けるケースもありますが、絶対に応じてはいけません。応じた人が負うリスクは、①営利目的助長罪(74条の6)で逮捕、②会社の負債・税金未納の連帯責任、③法人口座が特殊詐欺・マネロンに使われた場合の刑事責任追及、④司法書士法・行政書士法違反の幇助犯、⑤民事の損害賠償請求と多岐にわたります。月10万円程度の謝礼で、最大3年の懲役・300万円の罰金リスクは引き合いません。
既存保持者の3年経過措置と更新時の落とし穴

既存保持者は2028年10月16日まで経過措置。ただし「自動更新」ではなく、「見込み」評価という新基準への対応計画が必須。3年後は新基準必須。
経過措置の基本ルールと「見込み」評価
2025年10月16日施行の新制度では、既に経営・管理ビザで在留している方への3年間の経過措置が設けられています。具体的には①施行日前に受け付けた申請は原則旧基準で審査、②既に在留中の方の更新は、施行から3年以内(2028年10月16日まで)に行う申請に限り、新基準未充足でも経営状況や充足見込み等を踏まえ個別判断、③3年経過後の更新は新基準必須(資本金3,000万円・常勤雇用1名・日本語B2)という構造です。
注意点は、経過措置期間中の更新が「自動的に許可される」わけではないことです。「経営状況や改正後の基準に適合する見込み等を踏まえ、許否判断を行う」とされており、この「見込みがあるとき」という評価基準が、今後の更新審査における最大の懸念点です。これまでは「赤字でなく、税金を払っていれば更新できた」ケースでも、今後は「3年後に資本金3,000万円と常勤1名雇用の両方を達成できる具体的な計画」がなければ、「見込みなし」として更新を拒否される根拠になり得ます。
更新時に必要となる資料と3年経過後の選択肢
経過措置期間中の更新で「見込みあり」と評価されるためには、増資計画書、採用計画書、日本語体制計画、専門家確認付きの事業計画書、公租公課の納付証明といった資料が実質的に必須。新制度施行以前の2025年7月10日以降、更新時には「直近の在留期間における事業の経営又は管理に関する活動内容を具体的に説明する文書」も必須化されており、改正後は経営者本人の関与度まで細かくチェックされるようになりました。
2028年10月16日以降、新基準を満たせない既存保持者には①新基準クリア、②高度専門職への変更、③配偶者・定住ビザへの切替、④事業統合・M&A、⑤帰国・事業撤退といった選択肢が考えられます。どの選択肢を取るにしても、2028年10月の数か月前から準備するのでは遅すぎます。今(2026年)の段階から3年後の青写真を描き、計画的に動くことが極めて重要です。
健全な事業者がやるべき備え、5つの実務対応

健全な事業者がやるべき備え:①早期の専門家相談、②事業実態の証拠化、③公租公課の完納、④経営活動記録、⑤法的トラブル備え。「真面目にやっていれば大丈夫」では足りない時代に。
備え1:早期の専門家相談
新基準への対応や経過措置期間中の更新戦略は専門知識が必要です。経営・管理ビザに精通した行政書士、税理士、中小企業診断士などへの早期相談が不可欠。「ビザ専門」を謳っているか、入管申請取次行政書士の資格があるか、「全部任せれば100%通します」と言う業者は避けるのが鉄則。事業計画書の専門家確認は、中小企業診断士・公認会計士・税理士の3資格のいずれかを保有する人に依頼してください。
備え2:事業実態の客観的な証拠化
「実質的な経営活動への関与」が明文化された以上、自分が実際に経営しているという証拠を客観的に残す必要があります。取引先との契約書・メール・議事録、従業員への業務指示・採用面接記録、事業所の写真、銀行口座の通帳、請求書・領収書・売上記録の月次整理、本人の出勤・出張記録を地道に蓄積することが、3年後の更新審査での「実体の証明」になります。
備え3:公租公課(税金・社会保険料)の完納
更新時には雇用保険・労災保険・健康保険・厚生年金保険の納付、国税(源泉所得税・法人税・消費税)、地方税(法人住民税・法人事業税・個人住民税)のすべてが厳しくチェックされるため、未納は絶対に避けてください。一括完納が難しい場合は税務署・年金事務所・健保組合と分納協議を結び、誠実に対応する姿勢を示すことが重要です。
備え4:経営活動の日次・月次記録
2025年7月以降の更新申請では「事業の経営又は管理に関する活動内容を具体的に説明する文書」が必須。更新時に慌てて作るのではなく、月次報告書、取締役会議事録、採用・人事評価記録、主要顧客との面談記録、毎期の事業計画と実績の対比表などを日次・月次で蓄積しておくのがプロの対応です。
備え5:法的トラブルへの備え
厳格化に伴い、ビザ更新を巡る不許可・取消し処分への異議申立て、提携先・取引先トラブル、雇用した常勤職員との労務トラブルなど、法的リスクが格段に高まる時代になりました。民事トラブルで弁護士に相談すると、初回相談料5,000〜10,000円、着手金20〜50万円、成功報酬と費用は決して安くなく、「弁護士費用を考えたら泣き寝入り」というケースが少なくないのが実情です。
正直に申し上げると、弁護士保険は「今あるトラブル」には基本的に使えません。係争中の事案に加入後に使うことはできません。ただ、「次に起きるトラブル」には備えられる可能性があります。経営者として日本で事業を続ける限り、労働問題・契約トラブル・近隣トラブル・消費者被害・ネット誹謗中傷・交通事故など、いつどんな民事トラブルに巻き込まれるかわかりません。1日98円、缶コーヒー1本分のお金で、ご家族と事業を守る静かな安心感が手に入る。一度味わってみていただければと思います。
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経営・管理ビザ厳格化 よくある質問

Q1. 既に経営・管理ビザを持っていますが、今すぐ資本金を3,000万円に増額する必要がありますか?
いいえ、今すぐの増額は不要です。2028年10月16日までの3年経過措置期間中は、新基準未充足でも「経営状況や適合見込み等」を踏まえて個別判断されます。ただし「自動更新」ではなく「見込み」評価のため、3年以内に資本金3,000万円・常勤雇用1名へ近づける具体的な計画(増資ロードマップ・採用計画)の準備が重要。3年経過後は原則として新基準必須となります。
Q2. 「常勤職員1名以上」の対象になる従業員は誰ですか?
対象は日本人、特別永住者、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者のいずれかの在留資格を持つ方のみ。「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「技能実習」「留学」など他の就労ビザの外国人は、フルタイム雇用しても常勤職員としてカウントされません。なお日本語能力要件の「常勤職員」は範囲が広く、就労ビザ外国人も含まれます。
Q3. 事業計画書の専門家確認は、どの専門家に依頼すればいいですか?
施行日時点で評価・確認を行えるのは、①中小企業診断士、②公認会計士、③税理士の3資格に限定。事業計画の妥当性・実現可能性を客観的に評価し、確認結果を文書化します。なお弁護士・行政書士以外の方が報酬を得て申請書類作成を業として行うことは行政書士法違反となる可能性があり、書類作成は申請者本人が行う必要があります。
Q4. 仲介業者から「ビザ取得を200万円で代行する」と言われています。応じても大丈夫ですか?
絶対に応じないでください。200万円は正規報酬として不自然に高く、ペーパーカンパニー設立・虚偽事業計画書作成・名義貸しなど違法な手法を含む可能性が極めて高いです。応じた場合、申請人本人は在留資格等不正取得罪(70条1項2号の2)、仲介業者は営利目的助長罪(74条の6)でいずれも3年以下の懲役・300万円以下の罰金。在留資格取消・退去強制・10年間の上陸拒否も付随します。正規の入管申請取次行政書士に依頼してください。
Q5. 永住申請への影響はありますか?
大きな影響があります。施行日以降、改正後の許可基準(資本金3,000万円・常勤職員1名・日本語能力要件)に適合していない場合、永住許可申請は認められません。例えば資本金2,000万円の会社経営者は今後永住許可取得が極めて困難。過去のビザ申請で虚偽申告があった場合は事実上不可能となります。
Q6. 弁護士保険ミカタは経営・管理ビザのトラブルに使えますか?
刑事事件には使えません。これは弁護士保険商品全般に共通する基本ルールです。一方、民事トラブルについては、雇用した常勤職員との労務トラブル、取引先との契約トラブル、不当な損害賠償請求への対応、近隣・消費者・SNS上のトラブル、離婚・相続・住居問題などで備えとして検討する価値があります。実際の補償可否は約款と個別審査により判断されるため、あくまで「備えとして検討する価値がある事例」として捉えてください。
まとめ:制度の信頼回復と健全な事業者の備え
経営・管理ビザの厳格化は「お金で買えるビザ」からの大転換。健全な事業者にとっては差別化の追い風、悪用していたグループには摘発リスク急上昇。早期の専門家相談と実態の証拠化が鍵。
経営・管理ビザの新規申請が96%減。この衝撃的な数字は、日本の外国人受け入れ政策が「量から質へ」と明確に舵を切ったことを象徴しています。「お金で買えるビザ」と揶揄されてきた制度は、ペーパーカンパニー・医療悪用・SNS指南拡散といった深刻な悪用を経て、ついに大幅な構造改革に踏み切りました。健全な事業者にとって、これは決して悪いニュースではありません。市場に残る競合が「実態のある事業計画と履行能力を備えた起業家」だけになるため、真剣に準備してきた起業家には差別化の追い風です。一方、グレーゾーンの事業者にはペーパーカンパニー・虚偽事業計画・名義貸し・見せ金・バーチャルオフィス・業務丸投げのすべてが入管法70条1項2号の2や74条の6の対象となり、在留資格取消・退去強制・10年間の上陸拒否・永住申請の事実上の不可能化が付随します。
既存保持者は2028年10月16日までの3年経過措置がありますが「見込み」評価です。3年以内に資本金3,000万円・常勤雇用1名へ近づける具体的なロードマップを今から描き、実行することが必須。早期の専門家相談、事業実態の証拠化、公租公課の完納、経営活動の日次・月次記録。この4つの実務対応を地道に積み上げることが、新時代を生き抜く鍵になります。制度変化の中で発生しうる民事トラブルへの備えとして、1日98円〜の弁護士保険という選択肢も視野に入れていただければと思います。
50代男性経営者
うちは中国人の取締役を3名雇用していて、全員が経営・管理ビザで在留しています。今回の厳格化で、3年以内に新基準対応が必要だと知り、正直焦っています。資本金1,500万円の現状から、どうやって3,000万円まで増資すればいいのか、常勤職員も今は外国人ばかりで日本人がいない。何から始めればいいでしょうか?
工藤
焦るお気持ちよくわかります。3年と聞くと長いようで、計画的に動かないとあっという間です。最初にやるべきは3つ:①経営・管理ビザに精通した行政書士+税理士に早期相談して3年ロードマップを作る、②増資計画は利益剰余金の組み入れ・追加出資・VC調達も視野に税理士と財務戦略を組み立てる、③常勤職員は日本人または永住者・定住者の採用を計画的に。3年後の更新で「新基準達成見込みあり」と評価される証拠固めを、今日から始めてください。経営者として日本でビジネスを続ける限り、労務・契約・取引先トラブルなどの民事リスクも常にあります。弁護士保険は1日98円〜で事業と家族を守る備えとして検討する価値があります。何かあったらいつでもお気軽にご相談ください。
この記事のポイント
- 2025年10月の経営・管理ビザ厳格化で新規申請が月1,700件→70件へ96%激減。許可されたのは「上場企業の役員クラスが多い」
- 背景はペーパーカンパニー乱立、医療保険タダ乗り、SNSでのビザ取得指南拡散。「お金で買えるビザ」からの大転換
- 5つの新要件は資本金3,000万円・常勤雇用1名・日本語B2・専門家確認・実質的経営活動。OR条件からAND条件へ
- 入管法70条の不正取得罪・74条の6の助長罪はいずれも3年以下の懲役・300万円以下の罰金。退去強制も付随
- 既存保持者は2028年10月16日まで3年経過措置だが「見込み」評価。早期の専門家相談・事業実態の証拠化・公租公課完納が必須
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主な引用元:TBS NEWS DIG/JNN「【独自】在留資格『経営・管理』の許可基準厳格化 新規申請は96%減」、出入国在留管理庁「在留資格『経営・管理』に係る上陸基準省令等の改正について」、入管法70条1項2号の2(在留資格等不正取得罪)、入管法74条の6(営利目的助長罪)、入管法22条の4・24条、東京地裁平成25年12月3日判決、産経新聞「『日本に会社』で医療天国」(2025年3月16日)、読売新聞「特区民泊報道」(2025年2月28日)、参政党質問主意書、京都府警司法書士法違反事件報道(2024年11月)、神奈川県警出入国管理法違反事件報道(2025年7月)
工藤 辰浩
リーガルベスト代表 / 弁護士保険ミカタ正規代理店
リクルート在籍中に「世の中の負を解決したい」という想いを抱き、2017年に東京で弁護士保険代理店リーガルベストを創業。以来8年間で400名以上のお客様の弁護士保険相談に伴走。多くの弁護士セミナーへの参加、30名以上の弁護士との交流を通じて培った知見をmomegoto.jpで発信しています。監修弁護士様も募集中です。お気軽にお問い合わせください。
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供および弁護士保険代理店としての知見共有という位置づけであり、特定の法的助言を構成するものではありません。個別の事案に関する法的判断が必要な場合は弁護士・行政書士にご相談ください。記事内容は2026年5月9日時点の公開情報・公的機関の発表・報道等に基づいており、経営・管理ビザの運用基準・経過措置の取扱い・関連統計は今後変動する可能性があります。記事中に登場する事件名・関係者名は公開報道に基づくもので、係争中・捜査中の事件は公式情報源で必ずご確認ください。新規申請件数の数字(月1,700件→70件→96%減)はTBS NEWS DIG/JNNの独自報道に基づくもので、法務省関係者への取材結果として伝えられたものです。在留資格申請にあたっては、必ず信頼できる入管申請取次行政書士または弁護士にご相談ください。弁護士保険ミカタは民事トラブルが補償対象であり、刑事事件には使用できません。これは弁護士保険商品全般に共通する基本ルールです。補償内容・条件の詳細については、弁護士保険ミカタ公式サイトの重要事項説明書および約款をご確認ください。

