👤 こんな方に読んでほしい記事です
- 「ゲームのチートで本当に逮捕されるの?」と疑問に思っている方
- 自分・子どものチート行為が法的にどんな罪になるか正確に知りたい方
- チート行為で損害賠償請求される可能性はあるか知りたい方
- チートが家族・職場・将来のキャリアに与える影響を把握したい方
- ゲーム会社が不正行為者にどう対応するのかを知りたい方
「ゲームのチートくらいで逮捕されるはずがない」——そう思っていた若者が、ある朝、自宅に警察官がやってきてパソコンを押収されていく。これは作り話ではなく、日本で実際に起きた事件です。人気スマホゲーム「人狼ジャッジメント」でチート行為を3,400件以上繰り返した男性は、電子計算機損壊等業務妨害罪で家庭裁判所に送致され、民事では100万円以上の和解金を4年かけて分割払いすることになりました。別のケースではチートの方法をブログで拡散した人物に、東京地方裁判所が1,000万円の損害賠償を命じています。
警視庁は公式ホームページで「チート行為はやめましょう!」と明確に警告を発しています(2024年7月4日更新)。「ゲーム上の行為だから」という感覚がいかに危険か、現実の法的処分が示しています。チートに適用されうる法律は著作権法・不正競争防止法・刑法上の複数の罪と多岐にわたり、どの行為がどの罪に問われるかを正確に理解しておく必要があります。
この記事では、チートに問われうる刑事責任の全法的根拠・実名の逮捕事例と判決・民事損害賠償の実態・家族や将来への影響・ゲーム会社の対応策を、一次情報に基づいて完全解説します。
この記事でわかること
- ✓チートに問われる6つの法的根拠——著作権法・不正競争防止法・偽計業務妨害等の刑事罰の全体像
- ✓実名の逮捕・送検事例と判決——パズドラ・モンハン・人狼ジャッジメント・Alliance of Valiant Arms
- ✓民事損害賠償の実態——1000万円認容の根拠と裁判所が重視する「課金機会の減少」という判断基準
- ✓家族・職場・将来のキャリアへの影響——家宅捜索・PCの押収・学歴断念・フリーター転落の実例
- ✓ゲーム会社の対応——永久BAN・刑事告訴・チートAI・公式発表による抑止まで
- ✓eスポーツ選手のキャリア終了リスク——無期限出場停止という現実の処分事例
「ゲームのチート」は法律でどう定義されているか

警視庁の公式ホームページ(2024年7月4日更新)は、チート行為を「ゲームのデータやプログラムを改ざんして、正規の利用では本来できないこと(ゲーム内通貨やレアアイテムを不正に増やしたり、キャラクターのレベルを急激に上げるなど)を不正にできるようにする行為」と定義しています。同ページでは「取り返しのつかない事態となります」と明確に警告しています。
チート行為には大きく分けて次の種類があります。①ゲームデータを改ざんしてアイテム・通貨・パラメーターを不正に操作する「データ改ざん型」、②チートツール(不正プログラム)を作成・販売・配布する「ツール提供型」、③チートの方法をブログ・動画・SNSで拡散する「情報拡散型」、④チートツールをインストールしたデバイスをオークションで売る「媒介型」——これらはそれぞれ異なる法律で処罰されうる可能性があります。
「チート自体を取り締まる法律はない」は正確ではない
「チート行為を直接禁止した法律はない」という解説を見かけることがありますが、これは正確ではありません。チート行為の内容によっては著作権法・不正競争防止法・刑法上の複数の罪が成立しうるため、実態として多くのチート行為が刑事罰の対象になります。「法律がないから大丈夫」という認識は、現実の逮捕事例を見れば成り立ちません。
工藤
「ゲームの中の出来事だから現実には関係ない」という感覚が、最も危険な誤解です。オンラインゲームのサーバーは現実のコンピューターであり、そこへの不正操作は現実の犯罪として処罰されます。弁護士保険の相談業務を通じて「まさかゲームで逮捕されるとは」という声を聞くことがあります。法的知識のなさが取り返しのつかない事態を招く——このテーマはその典型例です。
チートで問われる6つの法的根拠——刑事責任の全体像

チートに問われうる法律は著作権法・不正競争防止法・刑法上の4罪と多岐にわたる。最高で5年以下の懲役または500万円以下の罰金。行為の種類によって適用される法律が異なる。
①著作権法違反(技術的保護手段の回避)——罰則:5年以下の懲役または500万円以下の罰金
ゲームに組み込まれた技術的保護手段(セキュリティ機能)を回避するプログラムを複製・譲渡・貸し渡す行為は、著作権法第120条の2に違反します。具体的には、チートツールをインストールしたスマートフォンをネットオークションに出品して売る行為、チートプログラムを作成して配布する行為などが該当します。著作者人格権(同一性保持権)の侵害という観点からも問題が生じることがあり、ゲームのパラメーターを改ざんしてストーリーを本来の想定を超えた展開に変えたり、格闘ゲームで通常プレイでは不可能な状態にできるプログラムを販売した事案では民事上の損害賠償責任が問題となっています。
②不正競争防止法違反(技術的制限手段の回避装置提供)——罰則:5年以下の懲役または500万円以下の罰金
オンラインゲームのほぼすべてがチート行為を防ぐセキュリティ技術(技術的制限手段)を導入しています。このセキュリティを無力化し、チート行為を可能にするプログラムを提供・譲渡・頒布する行為は、不正競争防止法に違反します。有償であれ無償であれ問わず処罰の対象となります。Alliance of Valiant Arms事件では、この罪と私電磁的記録不正作出罪の両方で起訴され、懲役2年・執行猶予4年の有罪判決が下されました。
③偽計業務妨害罪(刑法第233条)——罰則:3年以下の懲役または50万円以下の罰金
虚偽の風説を流したり偽計を用いて他人の業務を妨害する罪です。チート行為でゲーム会社の業務運営を妨害した場合に適用されます。人狼ジャッジメントのチートの方法をブログ・動画で拡散した事案では、この罪(偽計業務妨害幇助等)が問題となり、民事で1,000万円の損害賠償が認容されています。パズドラのチートツール販売事案(横浜地裁2019年4月16日判決)でも適用されました。
④電子計算機損壊等業務妨害罪(刑法第234条の2)——罰則:5年以下の懲役または100万円以下の罰金
コンピューターシステムを不正に操作して業務を妨害する罪です。ゲームのサーバーに虚偽のデータを送信し、購入していないアイテムを使用できるようにするなどの行為が該当します。人狼ジャッジメント事件の3,400件超の不正行為でこの罪が適用され、家庭裁判所への送致につながりました。刑事罰は偽計業務妨害より重く、5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
⑤私電磁的記録不正作出・同供用罪(刑法第161条の2)——罰則:5年以下の懲役または50万円以下の罰金
人の事務処理を誤らせるために電磁的記録を不正に作成したり、その不正な電磁的記録をコンピューターで利用できる状態にする罪です。ゲーム会社のサーバー上のゲームデータを不正に書き換える行為や、不正データを使ってゲームをプレイする行為が該当します。モンスターハンターフロンティアG事件(奈良県警・全国初のチート代行業者逮捕)でこの罪が適用され、通信制大学3年生に懲役1年・執行猶予3年の判決が下されました。
⑥電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)——罰則:10年以下の懲役
チート行為によってゲーム内の賞金や換金可能なアイテムなどの経済的利益を不正に得た場合に問題になりえます。eスポーツの賞金付き大会でチートを使って賞金を獲得した場合などが典型的な適用ケースとして想定されます。
実名の逮捕・送検事例と判決——何がどの罪に問われたか

チートによる逮捕・送検事例は日本国内で複数確認されており、刑事処分として執行猶予付き懲役・罰金50万円・家裁送致が実際に下されている。軽い気持ちの行為でも重い処分に至るケースが現実に存在する。
事例①:Alliance of Valiant Arms事件(2015年・東京地裁)
人気FPSゲーム「Alliance of Valiant Arms」内で使用可能なチートツールの販売を行ったとして、2015年5月に不正競争防止法違反(技術的制限手段回避装置提供)の容疑で逮捕・起訴。被告はこれとは別に、他のオンラインゲームでゲーム内アイテムを不正取得したとして私電磁的記録不正作出罪でも起訴されていた。東京地方裁判所は2015年7月に懲役2年・執行猶予4年の有罪判決を言い渡した。運営会社はこの判決を公式サイトで詳細に報告し、抑止力として活用した。
事例②:パズル&ドラゴンズ(パズドラ)事件①(著作権法違反)
「パズル&ドラゴンズ」において、所持モンスターの能力値を変更するなどのチート行為を行ったことが著作権法違反(技術的保護手段回避プログラムの複製物譲渡)に問われ、略式起訴の末、罰金50万円の刑が科せられた。
事例③:モンスターハンターフロンティアG事件(2014年・奈良県警・全国初)
「モンスターハンターフロンティアG」でゲーム内アイテムの不正入手代行をネットオークションで請け負っていた奈良県の通信制大学3年の男性(20歳)を、奈良県警が私電磁的記録不正作出・同供用容疑で逮捕。チート代行業者の摘発は全国初。最終的に懲役1年・執行猶予3年の判決が下された。
事例④:パズル&ドラゴンズ(パズドラ)事件②(偽計業務妨害)横浜地裁2019年
「パズル&ドラゴンズ」のダンジョンでスタミナが消費しないようにするツール「ゴーストルーター」を作成・販売した事案。横浜地方裁判所は2019年4月16日、販売者に懲役1年6月・執行猶予3年を言い渡した。裁判では「運営会社の課金機会の減少」が重視され、スタミナ消費なしでのプレイがアイテム購入機会を減少させ業務を妨害するとして有罪が認定された。
事例⑤:人狼ジャッジメント事件(2023年・家裁送致→2024年和解)
スマホゲームアプリ「人狼ジャッジメント」で3,400件超の不正行為・アカウント再作成約170回を繰り返した当時特定少年(18〜19歳)が、電子計算機損壊等業務妨害罪で2023年3月9日に東京地検により家庭裁判所に送致された。東京家庭裁判所は家庭裁判所調査官による教育的措置を経て厳重注意処分とした。その後民事でも責任追及が行われ、2024年5月24日に100万円以上の和解が成立。男性は4年分割で支払うことになった。
事例⑥:人狼ジャッジメント チート拡散ブログ事件(2020年・東京地裁)
「人狼ジャッジメント」のチート方法をインターネット上にブログ記事・動画として投稿し拡散した人物に対して、運営会社のそらいろ株式会社が損害賠償請求訴訟を提起。2020年11月27日、東京地方裁判所が1,000万円の損害賠償請求を認容した。代理人弁護士の中島博之氏によれば、1,000万円の根拠は「アプリの評価の低下・取り締まりにかかる人件費・検知システムの開発・システムのアップデート費用など」の合計。被害総額はざっと8,000万円と見積もられたが、1,000万円での認容となった。
読者の声
チートのやり方を動画で見ただけ、あるいは友達から聞いてやってみた程度でも逮捕されますか?
工藤
行為の規模・継続性・悪質性によって判断が変わります。単発の軽微な使用で即逮捕という事態は稀ですが、「やった程度なら許されるだろう」という判断は通用しません。人狼ジャッジメントの男性も「これくらいなら大丈夫」と思っていた。重要なのは、法的警告(BANや警告文)が届いた段階で即停止することです。
民事損害賠償の実態——裁判所が重視する「課金機会の減少」

なぜゲーム会社は高額賠償を請求できるのか
現在のオンラインゲームの多くは「基本プレイ無料・アイテム課金」モデルです。プレイヤーはゲームを有利に進めるためにスタミナ・アイテム・キャラクターなどを課金購入します。チートによってこれらを不正に入手できるようにすることは、運営会社の「課金機会を減少させる」行為として業務妨害と評価されます。パズドラ横浜地裁判決(2019年4月16日)はこの判断を明確に示しており、以後の判断基準として確立しています。
損害賠償の内訳——ゲーム会社が請求できる損害項目
ゲーム会社がチート行為者に対して請求できる損害賠償の項目は広範にわたります。具体的には、①チートによって生じたアプリの評価低下・ユーザー減少による売上の減少分、②不正行為の監視・取り締まりにかかる人件費の増加分、③チート検知システムの新規開発・改良にかかる費用、④不正対応のためのシステムアップデート費用、⑤ユーザーへの謝罪や対応コスト——これらを合算した額が請求根拠となります。人狼ジャッジメント事件では被害総額が約8,000万円と見積もられており、認容額1,000万円はその一部に過ぎません。
「撮影しただけ」「拡散しただけ」でも賠償責任を負う
重要なのは、チートを「自分でやった」人だけでなく、チートの方法を動画・ブログ・SNSで拡散した人物にも損害賠償責任が認められた点です。人狼ジャッジメントのブログ主は自らゲームを不正プレイしたわけではなく、「やり方を投稿した」だけで1,000万円の賠償を命じられています。これは、拡散によって他のユーザーのチートが誘発され、それによる損害全体の責任を問われたためです。
自己破産でも賠償責任が消えない可能性がある
故意による不法行為(偽計業務妨害・私電磁的記録不正作出等)に基づく損害賠償は、破産法上、免責対象から除外される場合があります(破産法253条1項2号)。すなわち、自己破産しても数百万〜1,000万円超の賠償責任が残り続けるリスクがあります。分割払いで何年もかけて支払い続けることになった人狼ジャッジメントの事例はその現実を示しています。
家族・職場・将来のキャリアへの影響——リアルな代償

家族への影響——家宅捜索・PCの押収・親の驚愕
人狼ジャッジメント事件の元少年はある朝、家族と同居する自宅のインターフォンが鳴り、訪ねてきた警察官から「人狼ジャッジメントについて思い当たる節はありますか」と聞かれた瞬間から状況が一変しました。そのまま家宅捜索が始まり、チートに使っていたパソコンとスマートフォンが押収されました。「応対した親は驚いていた。チートをしていることは話していたが、『やめとけよ』としか言われなかった」と振り返っています。
逮捕・家裁送致となった場合、未成年者では警察から親に連絡がいきます。学生の場合も同様です。親が身元引受人となる必要が生じ、家族全員の生活に影響が及びます。同居家族がいる場合、突然警察官が複数名で自宅に上がり込んでくる家宅捜索の場面では、逮捕の事実は隠しようがなくなります。
学歴・就職・将来への影響
人狼ジャッジメントの男性は、チートに没頭して真夜中まで人狼をプレイし続けた結果、朝起きられなくなり、高校2年生の夏から登校できなくなって中退しました。大学進学を目指したものの資金の工面がつかず、取材時点ではフリーターという状況でした。100万円超の和解金を4年分割で支払い続ける生活が続いています。
刑事処分として有罪判決(前科)がついた場合、資格取得や就職活動における不利は長期間続きます。弁護士・司法書士・公認会計士・教員・警察官など、欠格事由に前科が含まれる職種は多く、将来の選択肢が大幅に狭まります。特定少年として扱われた場合でも、処分の内容によっては社会的な影響が残ります。
eスポーツ選手のキャリア終了リスク
競技シーンにおけるチート行為は、一般プレイヤーとは比較にならない制裁を受けます。国際的なeスポーツ大会を管轄するESIC(Esports Integrity Coalition)は、オフライン大会でのチートツール使用を認定した選手に対して加盟大会への5年間出場停止を課した事例があります。日本国内でも、VALORANTの2023年公式大会出場選手によるチート行為が発覚し、無期限出場停止処分が下されました。プロゲーマーとしてのキャリアが実質的に終了する制裁です。
「ゲームのトラブル」が現実の法的問題に発展したとき、弁護士保険があれば
チートによる被害を受けた場合(不正行為者にゲームの公平性を破壊された、誹謗中傷された等)も、法的対応の局面では弁護士費用の備えが必要になります。また、万が一子どもや身内が当事者になった場合、弁護士への相談・依頼は不可欠です。ゲームトラブルに限らず、SNS被害・ネット誹謗中傷・詐欺被害など、デジタルに関連した法的トラブルへの備えとして弁護士保険は役立てていただけます。ただし加入前に発生しているトラブルは対象外のため、今のうちに備えておくことが大切です。弁護士保険ミカタの詳細はこちらからご確認ください。
ゲーム会社の対応——アカウントBANから刑事告訴まで

かつてはゲーム会社がチート行為に対してアカウント停止(BAN)程度の対応で済ませていた時代もありましたが、現在は法的手段を含む多層的な対応が標準となっています。
①アカウント永久BAN・課金履歴の全剥奪
最も基本的な対応が、チート行為が確認されたアカウントの永久停止です。これまでの課金・進捗履歴がすべて失われ、そのゲームに二度とアクセスできなくなります。人狼ジャッジメントの運営会社は毎月約900アカウントを規約違反で停止しており、年間では約1万アカウントが停止されています。
②チート検知AIの導入
プレイヤーの行動パターンを機械学習で分析し、人間の反応速度を超えた操作・統計的に異常な成績・ありえない動作パターンを自動検出するシステムが普及しています。検出精度は年々向上しており、「AI導入でこれまで以上にチートが発覚しやすくなった」という運営会社の声もあります。
③警察への相談・刑事告訴
悪質なケースでは運営会社が警察と協力して捜査に乗り出し、刑事告訴を行います。不正行為者の特定には、弁護士会照会・IPアドレスの追跡・ゲームログの解析などが用いられます。Alliance of Valiant Arms運営チームは「捜査機関並びに司法機関に積極的に協力してまいります」と公式に表明しており、摘発への積極姿勢は業界全体に広がっています。
④民事損害賠償請求
刑事告訴とは別に、損害賠償請求訴訟を提起するケースが増えています。人狼ジャッジメントの一連の事例(1,000万円認容・100万円超の和解)はその典型で、ゲーム会社が法的コストをかけてでも請求に踏み切ることで、抑止効果を狙う戦略です。
⑤摘発結果の公式サイトでの開示
Alliance of Valiant Arms・人狼ジャッジメントなど複数のゲーム会社が、チート行為者に対する刑事・民事の処分結果をゲーム内お知らせや公式サイトで公表しています。これは「本当に法的措置が取られる」というメッセージをプレイヤーコミュニティ全体に示す抑止策として機能しています。
eスポーツとチート——競技シーンへの深刻な影響

eスポーツにおけるチート問題は、一般プレイヤーとは異なる次元の影響をもたらします。競技の公平性が根本から損なわれ、スポンサー・視聴者・他の選手への信頼が崩壊するためです。
ESICは国際的なeスポーツ大会の健全性を守るための組織で、Counter-Strike 2(旧CS:GO)のオフライン大会でのチートツール使用に対して加盟大会への5年間出場停止を命じた事例があります。日本では、2023年のVALORANT公式大会において出場選手によるチート行為が発覚し、無期限出場停止という事実上のプロキャリア終了に相当する処分が下されました。
電子計算機使用詐欺罪の観点からは、賞金付き大会でチートを使用して賞金を不正受領した場合に問題となりえます。また、チートで不当に上位成績をおさめ、スポンサー契約やストリーマー活動での利益を得た場合も、詐欺的な要素が問題になりえます。
読者の声
チートを「使った」だけでなく、「見ていただけ」「友達に教えただけ」でも罪になるんですか?
工藤
「見ただけ」は問題になりにくいですが、「方法を教えた」「拡散した」「ツールを紹介した」段階から共犯・幇助として問われる可能性があります。人狼ジャッジメントのブログ主がまさにそのケースです。情報を拡散した本人には実行犯と同等以上の損害賠償責任が認められた点は非常に重要な判例です。
よくある質問(FAQ)

Q1. チートは「やってみただけ」なら逮捕されない?
単発・軽微な使用で即逮捕という事例は稀ですが、行為の性質によっては問題になりえます。特に「チートツールをインストールしたデバイスの販売」「ツールを他者に提供」「方法の拡散」は規模に関わらず法的に問われやすい行為です。「自分はたいしたことをしていない」という判断は法的な評価とは異なります。ゲーム会社からのBAN・警告が届いた段階で即座に停止し、以降の行為を一切行わないことが重要です。
Q2. 未成年(14歳未満・14歳以上・18〜19歳)でチートをした場合は?
14歳未満は刑事罰の対象外ですが、民事の損害賠償責任は問われえます。14歳以上の少年はチート行為が刑罰対象となり、警察の取り調べを経て家庭裁判所で審理されます。更生プログラムが適用されるケースが多いです。18〜19歳は「特定少年」として扱われ、事案によっては成人と同様に刑事裁判にかけられることもあります。人狼ジャッジメントの男性は特定少年として家裁送致されました。
Q3. チートツールを「インストールしただけ」で使っていない場合は?
インストールだけでは直ちに刑事責任を問われる可能性は低い場合もありますが、ゲーム会社の利用規約上は違反となりアカウントBANの対象になります。チートツールをインストールしたデバイスをオークションに出品・販売した場合は著作権法違反として逮捕された事例があります(前述事例③)。ツールの所持自体よりも「提供・販売・使用・拡散」の行為が法的リスクを高めます。
Q4. チートで被害を受けた場合(不正プレイヤーに嫌がらせを受けたなど)はどうすればいい?
まずゲーム会社の通報システムを使って報告し、証拠(スクリーンショット・動画・日時の記録)を保全することが第一歩です。チート行為による業務妨害が悪質なケースでは、ゲーム会社が刑事告訴や民事損害賠償請求を行います。被害者として弁護士に相談することで、相手の特定や損害賠償請求の可能性を検討することもできます。弁護士への相談費用の備えとして弁護士保険が役立つケースがあります。
Q5. チート行為で警察から取り調べを受けた場合、最初にすべきことは?
取り調べを受けた段階で、まず弁護士に相談することが最重要です。刑事事件は早期の対応が処分の軽重に影響します。弁護活動として①被害者であるゲーム会社との示談交渉②謝罪文の作成③家族や関係者の証言などが有効な手段となります。取り調べで不用意な発言をしてしまうと不利になるため、弁護士のアドバイスを受けてから対応することが重要です。
この記事のポイント
- ゲームのチートは現実の犯罪として処罰される。著作権法・不正競争防止法・偽計業務妨害・電子計算機損壊等業務妨害・私電磁的記録不正作出と6つの法的根拠があり、最高で5年以下の懲役または500万円以下の罰金が科されうる。
- 実際の逮捕・送検事例が複数存在する。AoV事件(懲役2年執行猶予4年)・モンハン代行業者(全国初逮捕・懲役1年執行猶予3年)・パズドラツール販売(懲役1年6月執行猶予3年)・人狼ジャッジメント(家裁送致・100万円超和解)。
- 民事損害賠償は1,000万円以上になりえる。人狼ジャッジメントのブログ主に東京地裁が1,000万円を認容。裁判所が重視する判断基準は「運営会社の課金機会の減少」。自己破産でも故意の不法行為は免責されない場合がある。
- 家族・将来への影響は深刻。家宅捜索・PC押収・親の驚愕・高校中退・大学断念・フリーター転落・4年分割払いという現実が人狼事件で明らかになった。eスポーツ選手は無期限出場停止というキャリア終了リスクがある。
- 「やっただけ」「拡散しただけ」も危険。チートを使った本人だけでなく、方法を動画・ブログで拡散した人物も1,000万円の損害賠償責任を負った。共犯・幇助として問われる可能性がある。
- ゲーム会社の対応は年々厳格化。BAN・チートAI・刑事告訴・民事請求・公式発表による抑止が多層的に組み合わせられ、「バレないだろう」という前提が成り立たなくなっている。
🔗 あわせて読みたい
主な引用元:警視庁「チート行為はやめましょう!」(2024年7月4日更新)、Alliance of Valiant Arms運営チーム公式発表(東京地裁2015年7月有罪判決)、そらいろ株式会社「不正行為対応について」(東京地裁2020年11月27日1000万円認容・2024年5月和解)、弁護士ドットコムニュース「人気ゲームで不正行為3400件、常識外れの元少年」(2024年8月)、横浜地方裁判所2019年4月16日判決(パズドラチートツール販売事件)、刑法第161条の2・第233条・第234条の2・第246条の2、著作権法第120条の2、不正競争防止法
工藤 辰浩
リーガルベスト代表 / 弁護士保険ミカタ正規代理店
リクルート在籍中に「世の中の負を解決したい」という想いを抱き、2017年に東京で弁護士保険代理店リーガルベストを創業。以来8年間で400名以上のお客様の弁護士保険相談に伴走。多くの弁護士セミナーへの参加、30名以上の弁護士との交流を通じて培った知見をmomegoto.jpで発信しています。監修弁護士様も募集中です。お気軽にお問い合わせください。
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供および弁護士保険代理店としての知見共有という位置づけであり、特定の法的助言を構成するものではありません。個別の事案に関する法的判断が必要な場合は、弁護士にご相談ください。記事内容は2026年4月時点の公開情報に基づいており、今後の法改正等により内容が変更される場合があります。

