👤 こんな方に読んでほしい記事です
- 再婚を検討していて、連れ子と新しいパートナーの養子縁組を考えている方
- 元配偶者が再婚・養子縁組をしたと知り、養育費や親権への影響が気になる方
- 共同親権を選んだ場合の再婚・養子縁組の手続きと注意点を知りたい方
- 15歳以上の子がいて、本人の意思で養子縁組できるか確認したい方
- 元配偶者が養子縁組に反対しているため、家裁の許可で突破したい方
2026年4月1日、離婚後の共同親権制度が施行されました。父母の双方が親権を持てるようになった一方で、あまり議論されてこなかった重要な論点があります。それが「親権者が再婚したとき、連れ子と再婚相手の養子縁組に、元配偶者の同意は必要なのか」という問題です。
結論から言うと、子が15歳未満の場合、共同親権下では元配偶者の同意が必須になりました。従来の単独親権なら同居親(親権者)だけで決められたものが、共同親権を選んだ瞬間、離れて暮らす元配偶者にも養子縁組の拒否権が発生します。これは再婚を急ぐ家庭にとって決して小さくない変化。逆に、子が15歳以上なら子本人の意思で養子縁組が可能で、元配偶者の同意は一切不要です。
さらに、養子縁組が成立した後の親権構造や養育費にも大きな影響が出ます。養親(再婚相手)が第一次的扶養義務者になり、実親の養育費支払い義務が原則として消滅。逆に、養親がいても高齢などで実質的に扶養できない場合は実親の義務が復活する、という実務的に判断の難しい領域が広がっています。
この記事では、弁護士保険代理店として400名以上の家族トラブル相談に伴走してきた立場から、①共同親権下での再婚・養子縁組の基本ルール、②15歳未満のケースと元配偶者の同意、③15歳以上のケース、④養子縁組後の親権構造、⑤養育費への影響、⑥最高裁・高裁の判例までを条文と実例ベースで整理します。
この記事でわかること
- ✓15歳未満の養子縁組は法定代理人の代諾が必要(民法797条)
- ✓共同親権下では父母両方が代諾権者、元配偶者の同意が必須になる
- ✓元配偶者が反対しても家裁の「承諾に代わる許可」で突破可能(797条4項)
- ✓15歳以上なら子本人の意思のみで養子縁組可、元配偶者同意は不要
- ✓養子縁組後の親権は養親+実親(親権者)の共同親権に(民法818条3項)
- ✓養親が第一次扶養義務者、実親の養育費支払い義務は原則消滅する
共同親権下の再婚・養子縁組、4つの重要ルール

共同親権下での養子縁組は、子の年齢・元配偶者の関与・養子縁組後の親権構造・養育費への影響の4点が単独親権時代と大きく異なる。特に15歳未満は元配偶者の同意が必須となる点に要注意。
ルール①子の年齢で手続きが分かれる
養子縁組の手続きは子の年齢で完全に二分されます。境界線は15歳。
- 15歳未満:法定代理人(親権者)が子に代わって承諾する「代諾縁組」(民法797条1項)
- 15歳以上:子本人が意思表示して縁組する「自己縁組」
15歳という年齢のラインは、民法が「15歳に達した子は自分の身分関係について判断能力がある」と位置づけているため。養子縁組のような重大な身分行為の判断を、15歳以上は自分でできると民法は考えています。
ルール②共同親権では代諾者が2人いる
2026年改正前の単独親権時代は、親権者1人だけが代諾すれば済みました。しかし共同親権下では、父母双方が親権者であるため、代諾にも両者の関与が必要になります。
民法818条3項(共同親権下の親権行使)
「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。」
→ 改正法では離婚後の共同親権にも準用され、共同親権を選択した父母は、重要な身分行為について共同で決定する必要があります。
つまり、15歳未満の子の養子縁組は、共同親権者である実親(同居親)と元配偶者(別居親)の両方の代諾が必要。単独親権時代のように、同居親だけで手続きを進めることはできません。
ルール③元配偶者が反対しても「家裁の許可」で突破できる
元配偶者が養子縁組に反対しても、改正民法797条4項により家庭裁判所に「縁組の承諾をするについての同意に代わる許可」を申立てることができます。裁判所が「縁組が子の利益に合致する」と判断すれば、元配偶者の同意なしで養子縁組を成立させられます。
この制度は共同親権導入に伴う実務上の重要な救済措置。元配偶者が感情的に反対するだけでは養子縁組を永遠に阻止できないよう、裁判所の後見的関与で解決する仕組みです。
ルール④養子縁組後の親権構造は「養親+実親」
養子縁組が成立すると、養親(再婚相手)は養子に対する親権を取得します(民法818条2項)。共同親権下では、養親と実親(同居親)の共同親権となるのが基本。離れて暮らす元配偶者は、養子縁組により親権を失います。
ここも実務上の大きな変化点。共同親権だったとしても、連れ子の養子縁組が成立すれば、元配偶者の親権は消滅し、養親と同居親の新しい共同親権体制にシフトします。
工藤
共同親権下の再婚・養子縁組で一番誤解されやすいのが、「共同親権は離婚時に選んだから、再婚時も特に手続きは要らないだろう」という思い込みなんです。実際は逆で、共同親権を選んだからこそ、再婚時に元配偶者との調整が必須になる。単独親権なら同居親だけで決められたことが、共同親権では元配偶者の関与が発生します。離婚時に共同親権を選ぶ際は、将来の再婚の可能性も含めて、相手との関係性を慎重に見極める必要があります。
15歳未満の子の養子縁組、元配偶者の同意が必要な場面と手続き

15歳未満の養子縁組は法定代理人の代諾が必要(民法797条1項)。共同親権下では元配偶者も法定代理人のため元配偶者の同意が必須。反対時は家裁の承諾に代わる許可(同条4項)で突破可能。
民法797条、代諾縁組の条文
改正民法797条は、15歳未満の養子縁組について次のように定めています。
改正民法797条(15歳未満の縁組の代諾)
「1 養子となる者が十五歳未満であるときは、その法定代理人が、これに代わって、縁組の承諾をすることができる。」「4 第1項の法定代理人が縁組の承諾をすることについてその同意をすることができない場合又は同意が得られない場合において、家庭裁判所は、養子となる者の利益のため必要があると認めるときは、縁組の承諾をするについての同意に代わる許可を与えることができる。」
条文のポイントは2つ。
- 1項:法定代理人(親権者)が子に代わって縁組を承諾する
- 4項:同意が得られない場合、家裁が「同意に代わる許可」を出せる(改正で新設)
共同親権下での代諾者、父母2人とも必要
共同親権下では、父母両方が「法定代理人」としての地位を持ちます。したがって、15歳未満の子の養子縁組の代諾は、同居親と離れて暮らす元配偶者の両方の承諾が必要です。
| 親権形態 | 代諾に必要な人 | 元配偶者同意 |
|---|---|---|
| 単独親権(同居親) | 同居親の代諾のみ | 不要 |
| 共同親権(父母双方) | 父母双方の代諾 | 必要 |
| 共同親権で元配偶者所在不明 | 同居親の単独代諾が可 | 事実上不要 |
ここが2026年の共同親権導入で実務が大きく変わったポイント。単独親権なら親権者1人だけで済んだ代諾が、共同親権では「元配偶者の関与」という追加ステップを生み出しました。
元配偶者が反対する典型的な理由
実務上、元配偶者が連れ子の養子縁組に反対する理由は概ね次の通り。
- 自分が親権を失いたくない:養子縁組成立で実親の親権が消滅する
- 面会交流が事実上難しくなることへの懸念:新しい家族体制に子が馴染むと離れる可能性
- 感情的な抵抗:元配偶者の再婚相手に自分の子を取られる感覚
- 養育費の減免は望ましい側面もあるが、親としての存在感が薄れる懸念
- 再婚相手への不信:虐待リスク、養育環境への懸念
このうち、子の利益と関係のない感情的な理由は、家裁の許可判断では考慮されません。逆に、再婚相手に虐待歴がある、養育環境が明らかに劣悪など、子の利益を害する具体的事情があれば、家裁も許可を出しにくくなります。
承諾に代わる許可の申立て手続き
元配偶者が合理的理由なく反対する場合、家裁に承諾に代わる許可を申立てます。申立ての流れは次の通り。
- 申立先:養子となる子の住所地を管轄する家庭裁判所
- 申立人:代諾縁組を希望する同居親(親権者)
- 必要書類:申立書、戸籍謄本(申立人・相手方・子・養親となる者)、事情説明書
- 費用:収入印紙800円+予納郵券
- 審理期間:1〜3カ月程度(争点が多いと半年以上)
- 判断基準:「養子となる者の利益のため必要があるか」
家裁は、子の監護状況、再婚相手の適格性、養子縁組による教育・生活環境の変化、元配偶者の反対理由の正当性などを総合的に審査して判断します。
元配偶者の同意を偽装するのは絶対NG
「再婚を急ぎたいから、元配偶者の同意を無断で書類に書いてしまおう」という発想は絶対に避けてください。私文書偽造罪(刑法159条)に問われる可能性があり、さらに養子縁組自体が無効になるリスクがあります。反対されていても、家裁の承諾に代わる許可という正規ルートを使えば必ず突破できるため、正攻法で進めてください。
15歳以上の子は「本人の意思」だけで養子縁組できる

15歳以上の子は自分の意思で養子縁組が可能。親権者(父母)の代諾も、元配偶者の同意も一切不要。この取扱いは共同親権導入後も変わらない。
15歳以上の自己縁組の根拠
民法797条1項は「養子となる者が十五歳未満であるとき」に代諾を認めています。逆に言えば、15歳以上の子は代諾の対象外。自分で縁組を決定できます。
この制度は共同親権導入後も変更ありません。15歳に達した時点で、子は養子縁組という重大な身分行為について判断能力が認められるため、親権者や元配偶者の意向に関係なく、自分の意思で縁組届に署名押印できます。
実務上の注意点、親権は養子縁組で変動する
ただし、15歳以上の子が自分の意思で養子縁組をした場合でも、養子縁組の成立により実親(元配偶者)の親権は消滅します。新しい親権者は養親と実親(同居親)の組み合わせになり、元配偶者は親権から外れます。
このため、15歳以上の子による養子縁組は、事後的に元配偶者が強い不満を持つケースが多い。家庭内での納得感を得るためには、子本人からの意思表明や、可能なら元配偶者への事前説明が望ましいですが、法律上は必須ではありません。
16歳・17歳の高校生が養子縁組する実例
実務で多いのは、16〜17歳の高校生が母親の再婚相手と養子縁組するケース。母親の再婚で姓が変わるのを契機に、「どうせ姓が変わるなら戸籍上も親子になっておきたい」と判断する子どもが少なくありません。
この年齢では子本人の判断能力が十分あるとみなされるため、元配偶者(通常は実父)の意向は法的には考慮されません。ただし、実父との感情的な対立が激化する原因にもなるため、事前の丁寧なコミュニケーションが実務上は重要です。
30代女性
うちの娘は16歳で、私が今度再婚する相手と養子縁組したいと言ってくれています。前夫は共同親権で、娘と月1回面会している関係ですが、前夫に話すと絶対反対されそうで…。娘本人の意思だけで進められるんでしょうか?
工藤
はい、16歳のお嬢さんご自身の意思だけで養子縁組が可能です。前夫の同意は法律上は不要。ただし気をつけたいのは、養子縁組が成立すると前夫の親権が消滅すること。前夫は自分の知らないうちに親権を失ったと知れば、強い反発を示す可能性が高いです。法律上は問題ないんですが、実務上は事前に「娘本人がこう望んでいる」と丁寧に伝えておくのが、事後のトラブル回避には有効。月1の面会交流は養子縁組後も継続可能なので、その点もあわせて説明すると良いでしょう。
養子縁組後の親権、誰が何を決められるのか

養子縁組が成立すると養親と実親(同居親)の共同親権に変わる(民法818条2項・3項)。離れて暮らす元配偶者は親権を失う。親子関係は存続するため面会交流の権利は維持。
民法818条の構造、養親優先の原則
民法818条は、未成年者の親権について次のように定めています。
民法818条(親権者)
「1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。」「2 子が養子であるときは、養親の親権に服する。」「3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。」
重要なのは2項。「子が養子であるときは、養親の親権に服する」と定められており、養子縁組が成立した瞬間、養親が親権者になります。そして、養親と実親(同居親)が婚姻関係にあるため、818条3項により両者の共同親権となります。
元配偶者は親権を失う
共同親権下で連れ子と再婚相手の養子縁組が成立した場合の親権構造の変化を整理します。
| タイミング | 親権者 |
|---|---|
| 離婚時(共同親権選択) | 実母+実父(元配偶者)の共同 |
| 実母再婚(養子縁組なし) | 実母+実父の共同(変化なし) |
| 実母再婚+養子縁組成立 | 養父(再婚相手)+実母の共同/実父は親権喪失 |
養子縁組の瞬間、元配偶者の親権は自動的に消滅します。これは共同親権制度下での最も大きな変化の1つであり、離れて暮らす親からすれば極めて重大な事実です。
親子関係は存続、面会交流は維持
ただし、養子縁組が成立しても、実親(元配偶者)と子の法律上の親子関係は消滅しません。普通養子縁組は実親子関係を断つものではないため、実親はそのまま「実親」の地位を保持します。
したがって、次のような権利・義務は存続します。
- 面会交流の権利:離婚時に取り決めた面会交流は養子縁組後も継続可能
- 相続権:子は実親の相続人であり続ける(養親の相続権も同時に取得)
- 扶養義務の残存:養親が扶養能力を欠く場合、実親の補充的扶養義務が復活
- 親族関係:実親側の祖父母・おじ・おばとの親族関係は維持
この点は、元配偶者にとっての救いでもあり、実務上のトラブルの種でもあります。親権は失うが親子関係は続くという複雑な地位が発生するため、面会交流の運用や子の進路への関与などで摩擦が生じやすい領域です。
特別養子縁組との違い
補足として、普通養子縁組と特別養子縁組の違いも押さえておきます。
| 項目 | 普通養子縁組 | 特別養子縁組 |
|---|---|---|
| 実親子関係 | 存続 | 消滅 |
| 実親の相続権 | あり | なし |
| 年齢制限 | 原則なし | 原則15歳未満 |
| 手続き | 役所届出 | 家裁審判必須 |
| 戸籍表記 | 「養子」と記載 | 実子と同じ |
再婚による連れ子の養子縁組では普通養子縁組が圧倒的多数。特別養子縁組は実親子関係を完全に断ち切る制度で、実親が養育できない場合(虐待、死亡、行方不明等)に限定的に使われます。この記事の中心も普通養子縁組です。
実務ケーススタディ、共同親権+再婚+養子縁組の5パターン
共同親権下での再婚・養子縁組の典型的なパターンを整理します。
| ケース | 元配偶者の同意 | 手続き |
|---|---|---|
| ①単独親権+子15歳未満 | 不要 | 親権者の代諾+役所届出 |
| ②共同親権+子15歳未満+元配偶者同意あり | 必要・取得済み | 両親権者の代諾+役所届出 |
| ③共同親権+子15歳未満+元配偶者反対 | 家裁許可必要 | 承諾に代わる許可申立+役所届出 |
| ④子15歳以上(親権形態問わず) | 不要 | 子本人の縁組届+役所届出 |
| ⑤元配偶者が所在不明 | 事実上不要 | 同居親の単独代諾+役所届出(戸籍の附票等で所在不明を立証) |
最も対応が難しいのが③のパターン。共同親権下で元配偶者が合理的理由なく反対しているケースでは、家裁の承諾に代わる許可申立てが不可避です。その際の実務的なポイントを次項で整理します。
30代女性
私は離婚時に共同親権を選んだんですが、今の再婚相手と娘(8歳)の養子縁組を進めようとしたら、前夫が「絶対反対。自分の娘を誰かにあげるなんて」と言ってきて…。前夫とは養育費でもよく揉めていて、感情的な理由での反対に近いんですが、家裁は本当に許可してくれるでしょうか?
工藤
家裁は「養子縁組が子の利益に合致するか」という一点で判断します。前夫の感情的な反対は、子の利益とは直接関係ない事情なので、判断材料にはなりません。逆にあなた側がしっかり主張すべきは、①再婚相手とお嬢さんの良好な関係、②養子縁組による教育・生活環境の向上、③経済的安定、④お嬢さん本人が養子縁組を望んでいるか(8歳でも意見は考慮される)の4点。これらを家裁調査官の調査で説得的に示せれば、許可が下りる可能性は十分あります。ただし申立書の書き方で結果が変わるので、弁護士への相談を強くおすすめします。
養子縁組後の養育費、実親の支払い義務は消滅するのか

養子縁組後は養親が第一次扶養義務者、実親は第二次的な補充義務者になる。実親の養育費支払い義務は原則として消滅するが、養親が扶養能力を欠く場合は復活する。
扶養義務の順位、養親が第一次
養子縁組が成立すると、扶養義務の順位が明確に変わります。
- 第一次扶養義務者:養親(再婚相手)と実親(同居親)
- 第二次扶養義務者:離れて暮らす実親(元配偶者)
養親が親権者となり「子の養育を全面的に引き受ける」意思を示したため、第一次的には養親が扶養責任を負います。離れて暮らす実親の扶養義務は後退し、「補充的」な位置づけになります。
養育費支払い義務の原則消滅
実務上、養子縁組成立により、離れて暮らす実親の養育費支払い義務は原則として消滅します。養親と同居親だけで子の生活を賄える状態では、実親に追加の負担を求める理由がないからです。
これは養育費を支払う側には朗報、受け取る側には打撃となり得ます。権利者(同居親)としては、再婚相手(養親)の収入で子の生活を賄えるなら、実親からの養育費はなくても問題ありません。しかし、再婚相手の収入が低い・不安定な場合は深刻な影響が出ます。
養親が扶養能力を欠く場合、実親の義務が復活
養親が客観的に扶養能力を欠く場合、実親の養育費支払い義務が復活する可能性があります。典型例は次の通り。
- 養親の失業・長期療養・収入の大幅低下
- 養親の死亡(養子縁組は継続、扶養義務はなくなる)
- 養親の破産・生活保護受給
- 養親が極めて高齢(祖父母との養子縁組など)
東京高裁令和5年6月13日決定、高齢養親のケース
興味深い判例として、東京高裁令和5年6月13日決定(判例タイムズ1521号118頁)があります。事案は、母方祖父母(82歳と78歳)が孫と養子縁組した後、実父が養育費の免除を求めたもの。
原審(千葉家裁)は「生産年齢を大きく外れている祖父母は実質的な扶養者ではない」として実父の主張を却下しましたが、東京高裁はこれを覆し、実父の養育費免除を認めました。判決のロジックは次の通り。
- 未成年者との養子縁組には、子の養育を全面的に引き受ける意思が含まれると解される
- 養親は法的に扶養義務を全面的に引き受ける意思を表示したとみるのが自然
- 養親が無資力等で扶養義務を履行できないときに限り、実親が次順位で扶養義務を負う
- 本件では養親の無資力等が認められないため、実親に扶養義務を課せない
この判例は、「養親が実質的に扶養しているかどうか」ではなく、「養親が無資力か等の客観的事情があるか」で判断するという立場を明確化しました。高齢でも収入・資産があれば、実親の義務は復活しないという重要な指針です。
養育費返還請求、養子縁組を隠されていたケース
実務上よくあるトラブルが、「元配偶者が養子縁組したことを黙っていて、自分は従来どおり養育費を払い続けていた」というケース。この場合、養子縁組成立時まで遡って過払分の返還請求ができる可能性があります。
参考判例として、長崎家裁昭和51年9月30日審判、神戸家裁姫路支部平成12年9月4日審判があり、いずれも養子縁組後の既払養育費の返還を認める方向で判断しています。実務では、振込先口座の名義変更(姓の変更)で発覚するケースが多く、発覚後に戸籍謄本を取り寄せて養子縁組時期を特定し、内容証明郵便で返還請求を始めるのが一般的な流れです。
最高裁平成26年4月14日決定、養子縁組後の親権者変更
養子縁組関連のもう1つの重要判例が、最高裁平成26年4月14日決定です。これは、親権者である母親が再婚して再婚相手と子が養子縁組した後、非親権者の実父が親権者変更を申立てた事案。
最高裁は、「養子縁組成立後は、非親権者である実父からの親権者変更は認められない」と判断しました。理由は、養子縁組により養親と実母の共同親権になっているため、単独親権を前提とする親権者変更制度の対象外というもの。
ただし、この判例は単独親権時代のものです。2026年の共同親権導入後は解釈が変わる可能性があり、共同親権下では別の法律構成が必要になるかもしれません。今後の判例の蓄積を注視する必要があります。
養育費減額・免除の実務ステップ
養子縁組を理由とする養育費の減額・免除交渉の実務ステップを整理します。支払う側の視点で流れをまとめました。
- 養子縁組の事実確認:戸籍謄本を取り寄せて養子縁組の成立時期と養親を特定
- 養親の扶養能力確認:養親の職業・収入・年齢などを可能な範囲で調査
- 任意交渉:元配偶者に対して内容証明郵便で養育費免除の意思表示
- 合意書作成:相手が応じた場合、養育費免除合意書を作成(公正証書化推奨)
- 養育費減額・免除調停:相手が応じない場合、家庭裁判所に申立て
- 審判移行:調停不成立の場合、裁判官による審判で決定
実務上、養子縁組成立時点まで遡って過払分の返還請求ができる可能性もあります。振込先口座の名義変更で養子縁組を発覚するケースが多く、発覚後は迅速に弁護士に相談するのが賢明です。過払期間が長いほど返還額が大きくなるため、早期の対応が結果を左右します。
受け取る側の注意点、安易な養子縁組は養育費を失う
一方、養育費を受け取る側(通常は同居親)の視点からすると、再婚相手との養子縁組は実親からの養育費を失うリスクを伴います。特に次のようなケースでは慎重な判断が必要です。
- 再婚相手の収入が不安定、または低い
- 再婚相手が自営業で収入変動が大きい
- 再婚相手との結婚歴が浅く、将来的な離婚リスクがある
- 元配偶者からの養育費が現在高額で、子の生活の大きな部分を占めている
養子縁組は戸籍上の身分関係を作るため、途中で気軽に取りやめることはできません。再婚相手との関係性、経済的な安定性、子の利益などを総合的に見極めてから決断すべき重大な法律行為です。迷った場合は、養子縁組を急がず、再婚のみ(養子縁組なし)でしばらく様子を見る選択肢も検討する価値があります。
共同親権下の再婚・養子縁組、弁護士相談が効く3つの場面
共同親権×再婚×養子縁組は、単独親権時代より法的論点が激増。承諾に代わる許可の申立、養育費減額・免除交渉、親権者変更調停など、弁護士の介入が効く場面が多い。費用の壁を平時から潰しておくのが賢明。
①元配偶者の反対を突破する家裁申立
共同親権下で元配偶者が養子縁組に反対したとき、家裁に「承諾に代わる許可」を申立てる必要があります。この手続きは、子の利益を説得的に論証する必要があり、弁護士の書面作成能力が結果を大きく左右します。
特に、再婚相手と子の関係性、これまでの監護実績、教育環境の向上、元配偶者の反対理由の不合理性などを、家裁調査官の調査に耐える形で立証する必要があります。
②養育費の減額・免除交渉
養子縁組後の養育費の取扱いは、話し合いで決まればベストですが、そうでない場合は養育費減額調停・免除調停を申立てる必要があります。特に次のような場面は弁護士介入が決定的です。
- 支払う側:養子縁組発覚後の減額・免除交渉
- 支払う側:養子縁組を隠されていた過払分の返還請求
- 受け取る側:養親の扶養能力不足を理由とする実親からの養育費維持交渉
- 受け取る側:養親の死亡後の実親への養育費復活請求
③親権者変更調停への対応
養子縁組後の親権者変更は最高裁判例で困難とされてきましたが、共同親権下では解釈が変わる可能性もあります。また、養親による虐待があった場合などは、まず親権停止を求める申立てを検討する必要があります。
これらの判断は法的にかなり高度で、弁護士の関与なしには戦えない領域です。
弁護士費用の目安
- 承諾に代わる許可の申立て代理:着手金20〜40万円+報酬金20〜40万円
- 養育費減額調停代理:着手金20〜40万円+報酬金20〜30万円
- 親権者変更調停代理:着手金30〜50万円+報酬金20〜40万円
各手続きを弁護士に依頼すると50〜100万円規模になることが多く、複数の手続きが絡めば数百万円に達することもあります。
弁護士保険ミカタ、共同親権時代の新しい備え
私は弁護士保険ミカタ正規代理店を8年運営してきて、400名以上の離婚・再婚・親権相談に伴走してきました。2026年の共同親権導入で、相談の内容は明らかに複雑化しています。単独親権時代なら「再婚して養子縁組したいです」で済んだ相談が、共同親権時代は「元配偶者の同意を取れるか」「取れなければ家裁申立をどう進めるか」という複層構造に。
弁護士費用の準備がある家庭とない家庭で、再婚時の選択肢の幅が大きく変わる時代になりました。「元配偶者がごねても、迷わず家裁申立に踏み切れる」状態にしておくことが、新しい家族の穏やかなスタートを支えます。
1日98円、新しい家族を守る静かな武器
再婚・養子縁組・親権変更・養育費交渉に加え、離婚調停、面会交流、財産分与、労働トラブルまで幅広くカバーする弁護士保険が1日98円〜。新しい家族のスタートに「迷わず法的手段を取れる」安心をつけてあげる選択肢です。
ただ、1つだけ大事なお話
正直にお伝えしておくと、弁護士保険は「何も起きていない今」しか入れない商品です。すでに元配偶者と対立が顕在化している、家裁から書類が届いた、養育費の減額請求を相手から出されてからでは、基本的に間に合いません。
逆に言えば、今この記事を読んでいる瞬間が、一番タイミングがいい。2026年の共同親権制度がスタートしたばかりの今、制度を使う側・使われる側のどちらでも、備えがあるかないかで結果は大きく変わります。
8年この仕事をしてきて、一番よく聞くのは「もっと早く入っておけばよかった」という声です。逆に「入らなきゃよかった」と言う方には、ほとんど会ったことがありません。1日98円、缶コーヒー1本分のお金で、新しい家族の足元が静かに固まる。その感覚を、一度味わってみていただければと思います。
1日98円〜で始められる弁護士保険ミカタ、興味があれば商品ページをのぞいてみてください。共同親権時代の再婚・養子縁組に、「頼れる味方がいる」状態で臨めます。
共同親権×再婚×養子縁組 よくある質問

Q1. 共同親権を選ばず単独親権で離婚していた場合、再婚時の養子縁組はどうなる?
単独親権の場合、親権者である同居親だけで代諾が可能で、元配偶者の同意は不要です。これは従来のルール通りで、2026年改正後も変わりません。単独親権か共同親権かで、再婚時の手続きは大きく違うということ。離婚時の親権選択は、将来の再婚可能性まで視野に入れて検討する必要があります。
Q2. 養子縁組に元配偶者が反対しています。家裁に申立てる必要がありますか?
はい、子が15歳未満で元配偶者が反対している場合、家庭裁判所に「縁組の承諾をするについての同意に代わる許可」を申立てる必要があります(民法797条4項)。裁判所が子の利益を総合的に判断し、許可が下りれば元配偶者の同意なしで養子縁組ができます。審理期間は1〜3カ月程度、収入印紙800円+郵券が基本費用です。
Q3. 養子縁組後、元配偶者は子と会えなくなる?
法的には、養子縁組後も実親子関係は存続するため、面会交流の権利は維持されます。離婚時に取り決めた面会交流は養子縁組後も継続可能。ただし実務上は、新しい家族体制の安定を理由に面会交流の頻度や方法が変更されるケースがあります。トラブルが起きた場合は面会交流調停で再度取り決めることができます。
Q4. 養子縁組後の実親の相続権はどうなる?
普通養子縁組の場合、子は実親と養親の両方から相続する権利を持ちます(民法887条)。子側から見れば実親2人・養親1人の3人の親から相続できる状態に。逆に、実親側から見れば、養子縁組後も子は自分の相続人であり続けます。相続税の2割加算の例外規定もあるため、実務的には有利な扱いです。
Q5. 養子縁組を解消(離縁)する方法は?
離縁には3つの方法があります。①協議離縁:当事者の協議と届出(民法811条1項)、②調停離縁:家裁の調停手続き、③裁判離縁:調停不成立時の訴訟。実母と養父の離婚時に離縁しないと、養親子関係は継続し、養父に扶養義務が残り続けます。実務上は離婚と同時に離縁するのが一般的。離縁が成立すると実親の養育費支払い義務が復活します。
Q6. 元配偶者に無断で養子縁組の届出を出したら?
共同親権下で元配偶者の同意欄を偽装するのは私文書偽造罪(刑法159条)に問われる可能性があり、養子縁組自体も無効になるリスクが高いです。絶対にやってはいけません。反対されていても、家裁の承諾に代わる許可という正規ルートが用意されているので、必ず正攻法で進めてください。
Q7. 養親が死亡した場合、実親の養育費支払い義務は復活する?
はい、復活します。養親の死亡により第一次扶養義務者がいなくなるため、実親が補充的扶養義務者として養育費支払い義務を負うことになります。ただし自動的には発生しないため、養親死亡を事情変更として養育費増額調停を申立てる必要があります。金額は家裁の養育費算定表に基づいて再算定されます。
Q8. 事実婚・未婚の母の子と養子縁組する場合は?
未婚の母の子は原則として母の単独親権下にあります。認知した父が親権者となっていない場合、父の同意は不要で母の代諾のみで養子縁組可能。一方、父が認知して父母の協議で父を親権者としている場合は父の同意が必要になるなど、ケースにより扱いが異なります。事実婚の場合は法律上の夫婦ではないため、共同親権の対象外です。
新しい家族のスタートを、正しい手順で
共同親権下の再婚・養子縁組は単独親権時代より手続き的に複雑化。子の年齢・元配偶者との関係・養育費への影響を総合的に整理し、必要なら家裁申立て・弁護士介入を迷わず選ぶことが、新しい家族の穏やかなスタートにつながる。
2026年4月の共同親権制度施行により、再婚・養子縁組の実務は大きく変わりました。単独親権時代に比べて法的論点が増え、特に15歳未満の子の連れ子養子縁組では、元配偶者の関与が避けられません。この変化は、ある意味で「離婚した相手とも生涯ある程度の関わりを持ち続ける」という共同親権制度の本質が、再婚の場面に現れたものと言えます。
この記事で整理したポイントを、改めて3つに絞って振り返ります。
①子の年齢が全てを決める。15歳未満は元配偶者の同意必須、反対時は家裁の承諾に代わる許可。15歳以上は子本人の意思のみ、元配偶者の同意は不要。この年齢ラインを正確に把握することが、再婚計画の第一歩です。
②養子縁組の成立は親権構造を根本から変える。離れて暮らす元配偶者の親権は消滅し、養親と同居親の新しい共同親権体制に移行。ただし実親子関係は存続するため、面会交流や相続権は維持される。この「親権は失うが親子関係は続く」複雑な地位を、家族全員が理解しておく必要があります。
③養育費は原則として消滅、ただし条件次第で復活する。養親が扶養能力を欠く場合、実親の補充的扶養義務が復活します。東京高裁令和5年決定のように、実務的に微妙な判断が求められるケースも多く、迷ったら早めに専門家に相談するのが賢明です。
再婚は、離婚を乗り越えた先にある新しい希望です。でも、法的な手順を誤ると、子どもや元配偶者との関係が壊れ、せっかくの再出発が重荷になってしまうことがあります。正しい手順で、丁寧に、関係者全員が納得できる形で進めることが、長く続く穏やかな家族関係につながります。
もし今、再婚と連れ子の養子縁組を具体的に検討している方、または元配偶者の再婚・養子縁組の通知を受けて戸惑っている方は、まず最寄りの弁護士事務所か法テラスの無料相談で、自分のケースの見通しを整理することをおすすめします。制度を知り、備えを整え、家族のための最善の選択ができますように。
この記事のポイント
- 共同親権下の再婚・養子縁組は、子の年齢で手続きが完全に分かれる。15歳未満は代諾縁組、15歳以上は自己縁組。
- 15歳未満の子は、共同親権下では元配偶者の同意が必須(民法797条1項)。反対時は家裁の承諾に代わる許可で突破可能(同条4項)。
- 15歳以上の子は、本人の意思のみで養子縁組可能。元配偶者の同意・親権者の代諾は一切不要。
- 養子縁組成立後は養親+実親(同居親)の共同親権に(民法818条2項・3項)。元配偶者は親権を失うが、実親子関係は存続し面会交流・相続権は維持。
- 養子縁組後は養親が第一次扶養義務者、実親の養育費支払い義務は原則消滅。養親が扶養能力を欠く場合は実親の義務が復活する。
- 東京高裁令和5年決定は、高齢養親でも実親の養育費免除を認めた重要判例。最高裁平成26年決定は養子縁組後の親権者変更を困難と判断(単独親権時代)。
- 共同親権時代の再婚・養子縁組は法的論点が多く、弁護士保険(1日98円〜)で平時から備えが賢明。新しい家族の穏やかなスタートを支える選択肢。
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主な引用元:改正民法797条、818条2項・3項、819条6項、民法306条3号、308条の2、887条、811条1項、729条、法務省「民法等の一部を改正する法律について」、最高裁平成26年4月14日決定(民集68巻4号279頁)、東京高裁令和5年6月13日決定(判例タイムズ1521号118頁)、長崎家裁昭和51年9月30日審判、神戸家裁姫路支部平成12年9月4日審判、千葉家裁令和4年審判(東京高裁令和5年決定の原審)、裁判所「養子縁組許可・離縁許可の申立て」、法務省「家族法制の見直しに関する要綱」
工藤 辰浩
リーガルベスト代表 / 弁護士保険ミカタ正規代理店
リクルート在籍中に「世の中の負を解決したい」という想いを抱き、2017年に東京で弁護士保険代理店リーガルベストを創業。以来8年間で400名以上のお客様の弁護士保険相談に伴走。多くの弁護士セミナーへの参加、30名以上の弁護士との交流を通じて培った知見をmomegoto.jpで発信しています。監修弁護士様も募集中です。お気軽にお問い合わせください。
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本記事は一般的な法律情報の提供および弁護士保険代理店としての知見共有という位置づけであり、特定の法的助言を構成するものではありません。個別の事案に関する法的判断が必要な場合は弁護士にご相談ください。記事内容は2026年4月19日時点の公開情報・改正民法・最新判例に基づいており、施行後の運用や判例の蓄積により内容が変更される場合があります。特に共同親権下での養子縁組実務は今後の運用で変化する可能性が高いため、最新の法務省・裁判所情報を必ずご確認ください。弁護士保険ミカタの補償内容・条件の詳細については、公式サイトの重要事項説明書および約款をご確認ください。

