👤 こんな方に読んでほしい記事です
- 消防団に入ったが、市から振り込まれた報酬をすぐ分団に「上納」するよう求められている
- 通帳・キャッシュカード・印鑑を幹部に渡すよう言われて不安を感じている
- 「活動費」「親睦会費」という名目で報酬の大半を再徴収されており、何に使われているかわからない
- これが法的に問題なのかどうか正確に知りたい
- 断りたいが、内部で声を上げにくい雰囲気があって困っている
「個人口座に振り込まれた年間報酬4万円のうち、手元に残ったのは1万円だった。何に使われたのか、明確な説明もない」——2021年に西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられたこの証言は、全国的な問題の氷山の一角でした。
消防団員は非常勤特別職の地方公務員として、市町村から年額報酬と出動報酬を受け取る権利があります。ところが全国の多くの地域で、この報酬が「上納」「再徴収」という形で団の幹部に回収されてきた実態があります。総務省消防庁は2021年・2022年に是正を求める通知を相次いで発出しましたが、朝日新聞の2025年7月の報道によれば、香川県・埼玉県所沢市・愛知県などでは通知後の2023〜2025年においても不正が継続していたことが団員の証言から浮上しています。
この記事では、消防団の報酬制度の法的根拠・消防庁通知の具体的内容・上納・再徴収行為の法的評価(業務上横領罪・強要罪等)・断る権利の根拠・相談先まで、一次情報ベースで整理します。「おかしい」と感じながら声を上げられずにいる方に、法律という後ろ盾を届けることがこの記事の目的です。
この記事でわかること
- ✓消防団員の報酬額・支給ルートの法的根拠(消防庁長官通知・地方自治法)
- ✓「上納型」「口座型」「再徴収型」それぞれの手口の実態と法的評価の違い
- ✓消防庁が2021年・2022年に発出した是正通知の具体的内容と、それでも改善されない理由
- ✓業務上横領罪(刑法第253条)・強要罪(刑法第223条)等の刑事的評価と返還請求の方法
- ✓通帳・印鑑の提出を断る権利と、上納・再徴収に応じてしまった場合の取り戻し方
消防団員の報酬制度——「誰が」「いくら」「どのように」受け取る権利があるか

消防団員の報酬は団員個人に対して市町村から直接支給されるものであり、消防庁長官通知(令和3年4月)が明示している。団を経由した支給や団への上納は、この原則に反する。
報酬額の法的根拠——消防庁長官通知が定める標準額
消防団員の報酬は、地方自治法第203条の2に基づき、各市町村の条例で定められます。ただし、総務省消防庁は令和3年4月13日付「非常勤消防団員の報酬等の基準」(消防地第171号 消防庁長官通知)において、全国統一の標準額を定めています。消防庁オフィシャルウェブサイトで公表されているこの標準額は以下の通りです。
36,500円
年額報酬(団員階級・標準額)
8,000円
出動報酬(災害・1日あたり標準額)
82,500円
年額報酬(団長階級・標準額)
これらはあくまで国が示す標準額であり、各市町村によって実際の支給額は異なります。たとえば東京消防庁の消防団員は年額42,500円〜、災害出動1回9,000円など、標準額を上回る自治体もあります。一方、消防庁の2022年の全国調査では、約3割にあたる532団体が標準額の3万6,500円に満たない年額報酬しか支給していないことが明らかになりました。
「個人への直接支給」が法的原則——団経由は不適切と明記
最も重要なのは支給方法の原則です。消防庁長官通知(令和3年4月13日)は次のように明記しています。「報酬及び費用弁償は、消防団員個人に対し、活動記録等に基づいて市町村から直接支給すること」。さらに「団(分団・部等を含む)経由で団員個人に支給することも、透明性の観点から適切ではなく、団員個人に直接支給すること」と、団を中継することすら不適切と明示しています。
これは、かつて「市町村→消防団→分団→個人」という流れで支給されていた慣行を根本から否定するものです。同通知ではさらに「一部の団員については個人に直接支給し、その他の団員については団に支給する等の方法も、団員間の公平性の観点から適切ではない」と、部分的な適用すら問題とされています。
給与条例主義——報酬は条例に定められた法定の権利
地方自治法第203条の2第4項は「報酬及び費用弁償の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない」と規定しており、これを「給与条例主義」といいます。つまり、消防団員の報酬は各市町村の条例で確定した法定の権利であり、団の内部規則や慣習によって変更・剥奪できるものではありません。
工藤
「これが昔からのやり方だから」という言葉でごまかされてきた問題です。報酬は団員個人の法定の権利であり、慣習は法律上の義務を生みません。消防庁自身が何度も「是正すべき」と通知を出してきた事実が、それを端的に示しています。
「上納」「再徴収」の手口——3つのパターンと実態

手口は主に3類型。「口座型」(通帳・カードを預ける)は違法性の可能性が最も高いと消防庁自身が通知で指摘。「現金型」(振込や手渡しで上納)、「再徴収型」(個人受取後に徴収)もいずれも是正対象。
手口①「口座型」——通帳・キャッシュカードを預けさせる
最も深刻なのが「口座型」です。愛知県や神奈川県海老名市の事例(朝日新聞2025年7月報道・朝日新聞2025年3月報道)では、入団時に分団幹部から「専用口座を開設し、通帳・キャッシュカード・届出印を提出するよう」指示されていたことが確認されています。海老名市の場合、指定された暗証番号でキャッシュカードを作成するよう求められていました。
この手口では、市町村から個人口座への振込という制度上は適切な流れが維持されているように見えながら、実態として団員本人が一度も報酬を受け取れない構造になっています。消防庁オフィシャルウェブサイトは「消防団の幹部が、団員の預金通帳・キャッシュカード・届出印等を預かり、預金を引き出す行為は、基準の趣旨を大きく逸脱するものであるため、早急に是正することが望ましい」と明記しています。
「口座型」の法的問題点
通帳・キャッシュカードの強制提出要求は、①入団の条件として強要すれば強要罪(刑法第223条)の検討対象、②幹部が預かった通帳から報酬を引き出して流用すれば業務上横領罪(刑法第253条)の検討対象となります。消防庁通知も「違法性もある」と明確に指摘しています。通帳・印鑑の提出義務は法律上存在しません。
手口②「現金型」——振込後に現金で回収・振込させる
2番目は「現金型」です。香川県や埼玉県所沢市の事例(朝日新聞2025年7月)では、市町村から個人口座へ報酬が振り込まれた後、団側が「親睦会費」「活動費」等の名目で現金での手渡しや振込を求めるパターンが確認されています。複数の団員が「幹部に求められたため応じた」と証言しています。
西日本新聞が2021年に報じた事例では、年額4万円の報酬のうち手元に残ったのは1万円のみで、「何に使われたか明確な説明もない」という状況でした。さらに福岡県内の事例では、手続き上は個人口座への振込に変更されたにもかかわらず、団担当者から「運営費が大幅に減少するため報酬を後日徴収する」と連絡があったことが報告されています。
手口③「プール型」——団に一括支給されそのまま管理される旧来慣行
2022年以前に多かったのが「プール型」です。市町村が団または分団の口座に一括して報酬を振り込み、それが分配されないまま団の運営費として使われていた慣行です。西日本新聞(2018年9月)によれば、福岡市消防団では全63分団にアンケートし、回答した34分団の約8割が団員個人の報酬を分団でプールしていた実態が明らかになっています。
この慣行を問題視した消防庁が2021年4月の通知で「個人口座への直接支給」を求め、条例改正を促したのが改革の出発点です。しかし「口座型」「現金型」という形で実質的な上納が継続しているのが現状です。
読者の声
入団時に「みんなやってること」と言われて通帳と印鑑を渡してしまいました。もう取り戻せませんか?
工藤
取り戻せます。通帳・印鑑の提出義務は法律上存在しないため、いつでも返還を求める権利があります。内容証明郵便で返還を請求するか、市区町村の消防担当窓口に相談するのが有効です。すでに引き出された報酬については不当利得返還請求(民法第703条)を検討できます。
消防庁の是正通知——何を指示し、なぜ効かないのか

消防庁は令和3年4月・令和4年3月・令和4年8月と3度にわたり是正通知を発出した。しかし法的強制力がなく、「是正を求める指導」にとどまるため自治体・団の対応は分かれたままであり、2023〜2025年においても不正が続く地域が報告されている。
令和3年4月通知(消防地第171号)——個人支給の原則と標準額の設定
最初の転換点は、消防庁長官通知「消防団員の処遇改善に係る報酬の改定等について」(令和3年4月13日付消防地第171号)です。この通知は、①年額報酬標準額(団員3万6,500円、団長8万2,500円等)の設定、②出動報酬の新設(災害1日8,000円等)、③報酬の個人口座への直接支給の徹底、④団員個人に直接支給すべき経費と団の運営費の明確な区別、を各市町村に求めました。
特に重要なのは「第5 報酬及び費用弁償は、消防団員個人に対し、活動記録等に基づいて市町村から直接支給すること」という直接支給の明示と、「団経由での支給も透明性の観点から適切ではない」という踏み込んだ指示です。条例改正を令和4年3月末日までに行い、令和4年4月1日から施行するよう改善を促しました。
令和4年8月通知——「口座型」の違法性に言及
2021年の通知後も不正が続いたことを受け、消防庁は令和4年8月に追加の是正通知を出しました。この通知では特に「口座型」(幹部が通帳・キャッシュカードを預かって管理する)について「違法性もある」と踏み込んだ表現が用いられています。「現金型」(振込後に現金で回収)も是正対象として明記されました。
しかし消防庁は、あくまで「市町村に対して是正を求める」という立場であり、個々の消防団に対して直接命令する権限を持っていません。西日本新聞の取材に対して消防庁は「法律に基づいた指導などができない立場。消防団は自治組織なので、自治体の関与が難しい」とコメントしています。これが是正の実効性を制約している根本的な構造問題です。
消防庁是正通知の変遷(3段階)
令和3年4月13日:個人口座直接支給の原則化・標準額設定・条例改正要請(令和4年4月1日施行)
令和4年3月23日:課税関係の明確化・基準の一部改正
令和4年8月:「口座型」の違法性に言及・「現金型」の是正明記・全国自治体への周知要請
→ これだけ重ねて通知を出したにもかかわらず、2023〜2025年においても各地で不正が継続していることが報道で確認されている。
なぜ改善されないのか——3つの構造的要因
問題が根絶されない背景には、以下の3つの構造的要因があります。第一に、消防団は消防組織法上は行政機関の一部でありながら、実際の運営は地域コミュニティの慣習に委ねられており、外部からのガバナンスが効きにくい点があります。第二に、「団全体のため」という正当化が機能しており、不正の加害者本人も「慣習を守っているだけ」という認識でいるケースが多い点があります。第三に、内部から声を上げにくい環境——地域での長期的な人間関係、消防団という地域防災の重要な組織への心理的な配慮——が告発を抑制している点があります。
報酬が個人口座に振り込まれる形式が整っているため、自治体の監査では表面的には制度通りに見える構造になっており、実態解明には団員の内部証言が不可欠となっています。この「見えにくい不正」こそが問題の核心です。
法的評価——上納・再徴収が問われる刑事・民事上の責任

「口座型」で報酬を着服した場合は業務上横領罪(刑法第253条・10年以下の拘禁刑)が成立し得る。強制が伴えば強要罪(刑法第223条)の検討対象にもなる。民事上は不当利得返還請求・損害賠償請求が可能。
業務上横領罪(刑法第253条)——最も重い刑事責任
刑法第253条は「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の拘禁刑に処する」と規定しています。業務上横領罪が成立するためには、①業務として他人の物を占有していたこと、②その物が他人の所有であること、③不法領得の意思(所有者でなければできない処分をする意思)があること、の各要件が必要です。
「口座型」において消防団幹部が団員の通帳・キャッシュカードを預かって報酬を引き出す行為は、「業務上(団の管理として)自己の占有下にある他人の物(団員の報酬)を横領する」という構造を備えており、業務上横領罪の成否が問題になります。特に、引き出した報酬を飲食費・旅行費等の団の親睦費に充てていた場合は、不法領得の意思の認定に有利に働きます。
業務上横領罪の法定刑は10年以下の拘禁刑で、罰金刑がないため、起訴されれば必ず正式裁判となります。時効は公訴時効7年です。
手口別・刑事責任の整理
口座型(通帳預かり+引き出し):業務上横領罪(刑法第253条)の成立可能性。消防庁通知も「違法性もある」と明記。
現金型(振込後に強制回収):強要罪(刑法第223条)または恐喝罪(刑法第249条)が問題になり得る。自発的に応じた場合でも、義務のない支払いを強いた場合は不当利得返還の対象。
プール型(団一括管理・着服):使途不明のまま費消した幹部には業務上横領罪または横領罪(刑法第252条)の検討が必要。
いずれも、「慣習だった」「団のためだった」という言い訳は法的評価を左右しない。
強要罪(刑法第223条)——義務のない上納を強いる場合
刑法第223条の強要罪は「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の拘禁刑に処する」と規定しています。
「入団の条件として通帳・印鑑を渡すことを義務付ける」「断ったら仕事がやりにくくなる」「地域で孤立する」といった言動が「義務のないことを行わせる」ための圧力となっていれば、強要罪の検討対象となります。また、上納を拒んだ団員への報復的な不利益扱いがあれば、権利行使の妨害(退団の自由の阻害等)として同条が問題になり得ます。
民事上の対抗手段——返還請求と損害賠償
民事上は2つの手段があります。第一は、不当利得返還請求(民法第703条)です。法律上の義務なく上納・徴収された報酬は不当利得として返還を求めることができます。時効は権利を知った時から5年、または行為から10年(民法第166条)です。第二は、損害賠償請求(民法第709条)です。違法な徴収行為によって精神的苦痛を受けた場合、慰謝料を含む損害賠償の対象となり得ます。
上納・再徴収を断る——具体的な権利行使の方法

通帳・印鑑の提出要求を断る権利
最も明確に断れるのが「口座型」への対応です。通帳・キャッシュカード・印鑑の提出は法律上の義務が存在しません。消防庁オフィシャルウェブサイトも「基準の趣旨を大きく逸脱するものであるため、早急に是正することが望ましい」と明示しています。断る際の言い方の例として、「消防庁の通知(令和4年通知)で、通帳・キャッシュカードの幹部への提出は是正すべきとされているため、提出はできません」という形で法的根拠を示すことが有効です。
すでに提出済みの場合は、書面で「通帳・キャッシュカード・印鑑の返還を求める」旨を幹部に通知し、応じない場合は市区町村の消防担当窓口に相談します。通帳等を返還しない場合、それ自体が権利侵害として問題になり得ます。
上納・再徴収の要求を断る権利
現金型・再徴収型の要求を断る際も、法的根拠を明示することが重要です。「消防庁長官通知(令和3年4月)で団員個人への直接支給が原則とされており、上納・再徴収は制度趣旨に反するため応じられません」という形で伝えます。「みんなやっている」「昔からのルール」という返答に対しては、「慣習は法律上の義務を生みません」と静かに繰り返すことが有効です。
断る際の実践ポイント
①記録を残す:要求を受けた日時・場所・相手の発言内容をメモ・録音(法的に問題なし)
②法的根拠を示す:「消防庁通知に基づき」という形で感情論でなく法律の話にする
③書面での回答:「上納には応じられない」旨を書面で伝え、コピーを手元に保管
④圧力があれば記録:「断ったら不利益を被る」等の言動があれば、強要罪の証拠として保全
⑤一人で抱え込まない:市区町村窓口・消防庁・弁護士への相談ルートを把握しておく
退団の自由——上納が嫌なら辞めることも正当な権利
消防団への入団は任意であり、退団の自由も法律上保障されています。「辞めるな」「地域の義務だ」という言葉は法律上の拘束力を持ちません。ただし実際には地域の人間関係への影響が伴うため、退団前に市区町村の消防担当窓口に相談し、退団の意思表示を書面で行うことが望ましいです。
退団した場合でも、在団中に不当に徴収された報酬の返還を求める権利は時効の範囲内で残ります。
読者の声
断ったら「地域で生きていけなくなる」と言われそうで怖いです。本当に断っていいんでしょうか?
工藤
断る権利は法律が担保しています。「地域で生きていけなくなる」という言葉が脅しとして機能しているなら、それ自体が問題です。一人で向き合わず、市区町村窓口や消防庁の相談窓口を使うことで、個人への圧力を組織的な問題として扱えるようになります。
刑事告訴・民事請求の実際——動くべきか、どう動くか

刑事告訴——警察への被害届・告訴状
「口座型」で多年にわたって報酬を着服された場合、刑法第253条の業務上横領罪として警察に被害届または告訴状を提出することが選択肢になります。業務上横領罪は親告罪ではないため、被害者の告訴がなくても捜査は可能ですが、実務的には被害届・告訴状の提出が捜査の契機になることがほとんどです。
ただし、業務上横領罪の立証には「誰が」「いくらを」「どのように着服したか」を示す証拠が必要です。団の会計帳簿・通帳の入出金記録・幹部による徴収要求を示す文書・証言等を保全したうえで弁護士に相談し、告訴状の作成支援を受けることが現実的です。
民事請求——不当利得返還・損害賠償
刑事告訴とは別に、民事上の不当利得返還請求(民法第703条)と損害賠償請求(民法第709条)は独立して行えます。訴訟ではなく、まず内容証明郵便による返還請求から始めることが多く、相手が応じない場合に民事調停・訴訟へと進む流れが一般的です。
弁護士に依頼する場合の費用は事案の複雑さと請求額によりますが、法テラス(日本司法支援センター)の収入条件を満たせば立替制度が利用できます。また弁護士費用の事前の備えとして「弁護士保険」という選択肢もあります。ただし、個別のトラブルに対する保険金の支払可否・支払額は保険会社が約款に基づいて事案ごとに判断しますので、具体的な補償内容は公式サイトの重要事項説明書・約款をご確認ください。
動く前に準備すべき証拠(チェックリスト)
☑ 報酬の振込明細(自分の口座通帳・通帳アプリ等)
☑ 上納・徴収を求めた文書(書面・LINE・メール等)
☑ 徴収要求の発言記録(メモ・録音)
☑ 実際に支払った金額・日時の記録
☑ 使途について説明を受けた内容(あれば)
☑ 同様の状況にある他の団員の証言(連絡先)
相談先ガイド——どこに何を相談するか

相談先① 市区町村の消防担当窓口
最初の相談先は、当該消防団を設置している市区町村の消防担当窓口(消防本部・消防課等)です。消防団は市区町村の行政機関であるため、市区町村が直接的な監督権を有しています。「消防庁の是正通知に反する扱いを受けている」という形で問題を伝えることで、行政指導が行われる可能性があります。
市区町村の消防担当窓口が対応しない・黙認しているという場合は、都道府県の消防担当部署、または市区町村の監査事務局、首長への申し入れ(市長への手紙等)が次の手段となります。
相談先② 総務省消防庁
消防庁の「消防団に関する相談・情報提供」窓口への連絡も選択肢の一つです。消防庁が是正通知を発出しているにもかかわらず改善されていない実態を伝えることで、都道府県・市区町村への指導強化につながる可能性があります。個別事案への直接介入は難しいとされていますが、情報収集という観点では有効です。
相談先③ 警察(被害届・相談)
業務上横領が疑われる事案(特に「口座型」で多額の報酬が着服されているケース)では、警察への相談・被害届提出が選択肢になります。警察相談専用電話「#9110」でまず状況を相談し、刑事事件としての立件可能性を確認したうえで、最寄りの警察署に被害届を提出します。
相談先④ 弁護士
内容証明郵便の作成・交渉・告訴状作成・訴訟代理については弁護士への依頼が最も確実です。地元の弁護士会が運営する法律相談センター(30分〜1時間・5,500円〜程度)での初回相談から始めることをお勧めします。法テラス(0570-078374)では収入・財産の条件を満たす方への弁護士費用立替制度があります。
弁護士費用の事前の備えとして、「弁護士保険(弁護士費用保険)」を日常的に準備しておくという考え方があります。リーガルベストで取り扱っている「弁護士保険ミカタ」は1日98円〜から。ただし待機期間があるため、今現在トラブルが起きていない時期の加入検討が前提です。個別の補償可否・金額は約款に基づき保険会社が事案ごとに判断しますので、公式サイトの重要事項説明書・約款を必ずご確認ください。
よくある質問(FAQ)

Q1. 入団時に「会費として報酬の一部を出すのが当然」と言われました。断れますか?
断れます。報酬は個人の法定の権利であり、入団の条件として強制的に徴収することは消防庁通知に反します。「入団の条件だ」という言葉は法律上の義務を生みません。書面で「上納には応じられない」旨を伝え、市区町村窓口に相談することを検討してください。
Q2. 通帳を渡してしまった場合、どうすれば取り戻せますか?
通帳・印鑑の返還を幹部に書面で求めてください。提出義務が法律上存在しないため、返還請求は正当な権利行使です。応じない場合は市区町村窓口・弁護士・警察への相談へ進みます。また、引き出された報酬について不当利得返還請求(民法第703条)を検討できます。時効(5年または10年)に注意が必要なので早めに動くことが重要です。
Q3. 「親睦会費」として毎年数千円を徴収されています。これも問題ですか?
本人の自発的な意思に基づく任意の会費であれば、それ自体は必ずしも違法ではありません。消防庁オフィシャルサイトも「親睦会の会費等を目的とした集金については、消防団の運営は団員の総意に基づいて行われるべきものであり、まずは団員全体で議論していただくようお願いしたい」としています。ただし強制的な徴収であれば問題です。会費の使途が不透明な場合は、団員として会計報告を求める権利があります。
Q4. 告訴すれば確実に捜査してもらえますか?
告訴・被害届は捜査の契機になりますが、立件・起訴には証拠の積み上げが必要です。業務上横領罪の立証には「誰が・いくらを・どのように着服したか」を示す証拠が重要です。一人で告訴状を作成するのは難しいため、弁護士のサポートを得ながら進めることをお勧めします。まずは証拠の保全から始めてください。
Q5. 自治体が黙認している場合はどうすればいいですか?
都道府県の消防担当部署・監査委員会への申立て・首長への申し入れが選択肢となります。複数の団員で連名して問題提起すれば、より対応を求めやすくなります。弁護士による内容証明郵便を自治体に送ることで、法的問題として対応を迫ることも可能です。メディアへの情報提供によって問題が社会的に認知されることが是正のきっかけになることも、全国の報道事例が示しています。
Q6. 弁護士費用が心配で動き出せません
法テラス(日本司法支援センター)の弁護士費用立替制度(収入・財産の条件あり)や、弁護士会の無料相談(初回30分無料の場合あり)を利用してください。また、今後のトラブルへの備えとして「弁護士保険」を検討することも有効です。リーガルベスト取扱の弁護士保険ミカタは1日98円〜。ただし加入前の事案は対象外・待機期間があるため、今何も起きていない時期の加入検討が前提です。補償の詳細は必ず公式の重要事項説明書・約款をご確認ください。
この記事のポイント
- 消防団員の報酬は地方自治法第203条の2に基づく法定の権利。消防庁長官通知(令和3年4月)が個人口座への直接支給を原則とし、団経由の支給も不適切と明記。標準額は年額3万6,500円・出動1日8,000円(団員階級)。
- 上納・再徴収の手口は3類型。「口座型」(通帳・カードを預ける)は消防庁通知が「違法性もある」と明言。「現金型」(振込後に回収)・「プール型」(一括管理)もいずれも是正対象。
- 消防庁は2021年・2022年に3度の是正通知を発出したが、法的強制力がなく自治体への指導にとどまるため、2023〜2025年においても各地で不正継続が報告されている(朝日新聞2025年7月)。
- 刑事上は、口座型での着服は業務上横領罪(刑法第253条・10年以下の拘禁刑)、強制が伴えば強要罪(刑法第223条)の検討対象。「慣習だった」「団のためだった」という弁解は法的評価を左右しない。
- 民事上は不当利得返還請求(民法第703条・時効5〜10年)・損害賠償請求(民法第709条)が可能。通帳・印鑑の提出義務は法律上存在しない。いつでも返還請求できる。
- 相談先は市区町村消防担当→都道府県→消防庁→警察→弁護士の順に。法テラスの費用立替制度や、日常的な備えとして弁護士保険という選択肢もある。ただし加入前の事案・待機期間中は対象外。個別の補償内容は必ず公式の約款・重要事項説明書をご確認ください。
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主な引用元:消防庁長官通知「消防団員の処遇改善に係る報酬の改定等について」(令和3年4月13日付消防地第171号)、消防庁長官通知「非常勤消防団員の報酬等の基準及び非常勤消防団員の報酬等の基準に係る留意点についての一部改正について」(令和4年3月23日付)、総務省消防庁「消防団員の処遇について」(消防団オフィシャルウェブサイト)、地方自治法第203条の2(報酬及び費用弁償)、刑法第252条(横領罪)・第253条(業務上横領罪)・第223条(強要罪)・第249条(恐喝罪)、民法第703条(不当利得)・第709条(不法行為)、西日本新聞「消防団の個人報酬、もらった後に再徴収される」(2021年12月6日)、西日本新聞「消防団の個人報酬、団の再徴収を自治体『黙認』」(2022年)、朝日新聞「消防団員、個人報酬を受け取れず 現金で『上納』させる不正が相次ぐ」(2025年7月9日)、朝日新聞「消防団員の報酬、分団が管理 通帳・カードの回収、国の是正通知後も」(2025年3月6日、神奈川県海老名市事例)、日本公認不正検査士協会「消防団の『報酬上納』問題にみる、組織的慣行と不正の境界」、ミカタ少額短期保険株式会社「弁護士保険ミカタ 補償詳細と注意事項」
工藤 辰浩
リーガルベスト代表 / 弁護士保険ミカタ正規代理店
リクルート在籍中に「世の中の負を解決したい」という想いを抱き、2017年に東京で弁護士保険代理店リーガルベストを創業。以来8年間で400名以上のお客様の弁護士保険相談に伴走。多くの弁護士セミナーへの参加、30名以上の弁護士との交流を通じて培った知見をmomegoto.jpで発信しています。監修弁護士様も募集中です。お気軽にお問い合わせください。
免責事項
本記事は一般的な法律情報の提供および弁護士保険代理店としての知見共有という位置づけであり、特定の法的助言を構成するものではありません。個別の事案に関する法的判断が必要な場合は、弁護士にご相談ください。記事内容は2026年4月時点の公開情報に基づいており、今後の法改正等により内容が変更される場合があります。弁護士保険ミカタの補償内容・条件の詳細については、必ず公式サイトの重要事項説明書および約款をご確認ください。

