👤 こんな方に読んでほしい記事です
- ▶REDMAGIC 11 Pro/11 Pro+を購入して「騙された」と感じている方
- ▶ベンチマークスコアを信じて高額スマホを買ったが実性能との乖離に納得できない方
- ▶返品・返金・損害賠償を請求できるのか法的根拠を知りたい方
- ▶景品表示法・消費者契約法・契約不適合責任の違いと使い分けを理解したい方
- ▶万一の法的トラブルに備えて弁護士費用の準備を考えている方
2026年3月、ガジェット系YouTuber「さいちょう」氏(チャンネル登録者37万人超)が公開した検証動画が、スマホ業界を揺るがしています。中国ZTE傘下のnubia Technology製ゲーミングスマートフォン「REDMAGIC 11 Pro」および「REDMAGIC 11 Pro+」において、ベンチマークアプリを起動した瞬間だけ、通常では出せないような性能を叩き出す「ベンチマーク・ブースティング」が行われている疑いが強いという内容でした。
この告発を受け、ベンチマークソフト「3DMark」を提供する米UL Solutionsが独自調査を実施。2026年4月9日(米国時間)、公式ランキングから両機種を除外したと発表しました。Google Playの公開版と、UL Solutions内部で用いる名称を変更した非公開版で同じテストを実施したところ、公開版のスコアが最大24%も高かったといいます。
REDMAGIC 11 Pro(16GB/512GB)の国内販売価格は157,800円。ユーザーが「ベンチマークスコアの高さ」を信じて約16万円を支払ったにもかかわらず、その数値が実使用では再現できないとなれば、「騙された」と感じるのは当然です。この記事では、弁護士保険の相談に8年・400名以上関わってきた工藤が、一次情報(UL Solutions発表・消費者庁資料・法律条文・判例)をもとに、購入者が取れる法的手段を徹底解説します。
この記事でわかること
- ✓UL Solutionsの公式発表:最大24%のスコア水増しが確認された検証の詳細
- ✓景品表示法上の優良誤認表示に該当するか(課徴金売上の3%)
- ✓消費者契約法4条1項1号の不実告知による契約取消の可能性
- ✓民法562条~564条の契約不適合責任による返品・代金減額・損害賠償
- ✓刑法詐欺罪(246条)の成立要件と過去のスマホベンチマーク不正集団訴訟
- ✓購入者が今すぐ取るべき返品・返金交渉の5ステップ
今回の事件、何が起きたのか?REDMAGIC 11 Pro不正問題の全体像

REDMAGIC 11 Pro/Pro+は、ベンチマークアプリを検知した瞬間だけ「Diabloモード」が自動発動し、通常より最大24%高いスコアを叩き出す仕組みが判明。UL Solutionsは3DMark公式ランキングから両機種を除外した。
事件の経緯(2026年3月〜4月)
2026年3月21日、YouTuberのさいちょう氏(@Saityo_Zunda)が「【性能水増し疑惑】ベンチマーク会社と協力して『スマホ業界の巨大な闇』を検証する」と題する動画を公開しました。同氏はREDMAGIC 11 Proのレビューのために水冷機構をオフにした状態でベンチマークアプリを起動したところ、設定にかかわらず強制的にファンと冷却液がフル回転を始めるという不可解な挙動を発見しました。
この挙動は、3DMark、Geekbench、AnTuTuという主要3つのベンチマークアプリで共通して確認されました。さいちょう氏は3DMarkを提供する米UL Solutionsに協力を要請し、業務用分析ソフト「PerfDog」も自費で導入して1ヶ月以上かけて検証を実施。その結果、UL Solutionsは2026年4月9日、両機種を3DMark公式ランキングから除外したと発表しました。
UL Solutionsが発表した事実
UL Solutionsの発表によれば、Google Playで公開されているバージョンと、UL Solutions内部で用いる名称を変更した非公開版で同じテストを実施したところ、公開版のスコアは非公開版に対して最大24%も高かったと報告されています。さらなる分析で、REDMAGIC 11 Pro/Pro+は3DMarkアプリの名前を認識して、一般より高性能な「Diablo」モードに自動的に切り替えていることが判明しました。
しかも、3DMark実行中にこのモードを無効にすることができないという点が、UL Solutionsの規定違反と認定された最大の理由です。ユーザーが任意で有効化できるオプションのパフォーマンスモードは、デフォルトで「無効」になっていれば規定上認められるのですが、REDMAGIC 11 Pro/Pro+の場合はデフォルトで「有効」かつユーザーが無効化できないという構造になっていました。
問題は「スコアの水増し」だけではない
今回の事件が深刻なのは、単なる数値の水増しにとどまらないからです。以下の3つの問題が重なっています。
さいちょう氏の検証では、ステルス版(アプリ名を変更した非公開版)で動作させた場合、本体温度は終了時点で約40度で安定していました。ところが通常版では最高55度、プロセッサ真上は60度近くに達し、GPU温度は100度に張り付き、約14分後に強制電源オフとなる結果が出ています。つまり、ベンチマーク時に発動する「Diabloモード」は、端末の安全マージンを超えた動作を強制している可能性が高いということです。
工藤
8年間弁護士保険の相談に関わってきて思うのは、「高額商品をスペック表示を信じて買った後、実態が違うと分かった」というトラブルは決して珍しくないということです。今回のREDMAGIC事件は、購入者にとって「泣き寝入り」する話ではありません。日本の法律は、こうした消費者を複数の角度から守る仕組みを用意しています。
ベンチマークブースティングの仕組みと過去の業界事例

ベンチマーク不正は2013年のGalaxy S4以降、SamsungやHuawei、OPPO、OnePlusなどで繰り返し発覚している業界慣行。Galaxy S4の件では米国で集団訴訟に発展し、Samsungは和解に至っている。
ベンチマーク・ブースティングとは何か
ベンチマーク・ブースティングとは、スマートフォンのOSがベンチマークアプリの起動を検知した瞬間だけ、通常の実使用では出せないような「限界超え」の性能モードに切り替えてスコアを水増しする行為を指します。UL Solutionsをはじめ、多くのベンチマーク提供元は、この特別動作を規約上明確に禁止しています。
なぜ禁止されているかというと、ベンチマークスコアは「実際のゲーム動作を反映した結果」を示すことが前提だからです。特定アプリ起動時だけ発動するブーストモードは、ユーザーが実際にゲームやアプリを使う際のパフォーマンスと乖離した数値となり、ベンチマークの存在意義そのものを損ないます。
過去のベンチマーク不正事件一覧
今回のREDMAGIC事件は、スマホ業界では初めてのケースではありません。過去にも以下の事例が発覚しています。
| 発覚時期 | メーカー/機種 | 概要 |
|---|---|---|
| 2013年 | Samsung Galaxy S4 | 特定ベンチマークアプリでのみCPUリミッターを解除。米国で集団訴訟となり、後にSamsungは和解。 |
| 2018年 | Huawei P20/P20 Pro/nova 3/Honor Play | 3DMark実行時に異常な性能向上と発熱。UL Solutionsがランキングから削除。 |
| 2018年 | OPPO Find X/F7 | 3DMarkスコアを高く見せるための動作調整。UL Solutionsがスコア除外。 |
| 2021年 | OnePlus 9/9 Pro | ベンチマークアプリは全力動作、一般アプリはパフォーマンス制限。Geekbenchがランキング除外。 |
| 2021年 | Realme GT | AnTuTuで処理順序書き換えが発覚。ランキングから3ヶ月間除外。 |
| 2022年 | Samsung Galaxy S22/S21/S20/S10 | Game Optimizing Service(GOS)が問題視され、Geekbenchがランキング除外。 |
| 2026年 | REDMAGIC 11 Pro/Pro+(今回) | 3DMarkで最大24%のスコア水増し確認。UL Solutionsがランキングから除外。 |
Galaxy S4の集団訴訟が示す「返金の前例」
特に注目すべきは2013年のGalaxy S4事件です。この件では、特定のベンチマークアプリでのみCPUのリミッターを解除する「最適化」が施されていたことが発覚。2014年11月に米国で集団訴訟が起こされ、原告らとSamsungの間で和解が成立しました。和解条件として、Samsungは2024年までベンチマークテストに対するチート行為を行わないことに同意したと報じられています。
この事実は、「メーカーがベンチマーク不正を行った場合、購入者は集団的にも個別にも法的責任を追及できる」という明確な前例を示しています。REDMAGIC事件においても、同様の救済ルートが理論上は十分に考えられます。
「業界慣行だからOK」という理屈は通らない
REDMAGICの日本総代理店Fastlane Japanは2026年3月22日の公式見解で「アプリ単位でOSやハードウェアの挙動を最適化(チューニング)すること自体は、ユーザーエクスペリエンス向上の観点から必要」と説明しています。しかし、ユーザーに無告知・デフォルト有効・無効化不可という3条件が揃った動作は、他メーカーでも過去にすべて規定違反と認定されています。業界慣行だから許されるという理屈は、法律の世界では通用しません。
問題①:景品表示法違反(優良誤認表示)の可能性

ベンチマークスコアを広告・レビューで訴求しながら、実際には検知ブースト機能で水増しされた数値だった場合、景品表示法第5条第1号の優良誤認表示に該当する可能性がある。措置命令+課徴金(売上額の3%)の対象。
景品表示法第5条第1号(優良誤認表示)とは
景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、事業者が商品・サービスの品質・規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示す表示、または事実に相違して競争関係にある事業者よりも著しく優良であると示す表示を禁止しています(景品表示法第5条第1号)。
消費者庁の公式資料では「具体的には、商品・サービスの品質を、実際よりも優れていると偽って宣伝したり、競争業者が販売する商品・サービスよりも特に優れているわけではないのに、あたかも優れているかのように偽って宣伝する行為が優良誤認表示に該当します」と明示されています。
ベンチマークスコアは「商品の性能表示」に該当する
景品表示法の規制対象となる「表示」は、ポスター・チラシ・CM・ウェブサイト・さらには口頭でのセールストークまで非常に広範です。商品の性能に関する数値(ベンチマークスコア)を広告や公式サイトで訴求することは、まさに「品質・規格・内容」に関する表示に該当します。
REDMAGIC 11 Proの場合、メーカー・販売代理店・レビュー媒体が広告や公式サイトで3DMarkやAnTuTuのスコアをアピールしていた場合、そのスコアが「特定アプリ起動時のみ発動する隠しモード」で水増しされた数値であれば、実際の通常動作時のスコアより著しく優良に見せる表示となります。
読者の声
でも、メーカーが「騙すつもりはなかった」と言えば違反にならないんじゃないですか?
工藤
これが景品表示法の重要なポイントです。景品表示法では、事業者の故意・過失は問題にされません。表示が結果として実際と著しく乖離していれば、故意でなくても違反が成立するとされています(弁護士解説)。これは消費者保護を徹底するための設計です。
違反した場合の行政処分と課徴金
優良誤認表示が認定された場合、事業者には以下の処分が下されます。
① 措置命令(景品表示法第7条)
違反行為の差止め、再発防止策の実施、一般消費者への周知、今後同様の違反行為を行わないことなどを命じる命令。違反事業者の名称は消費者庁ウェブサイトで公表される。
② 課徴金納付命令(景品表示法第8条)
課徴金対象期間(最大3年間)の売上額に3%を乗じた額を国庫に納付。課徴金額が150万円未満(売上額5,000万円未満)の場合は免除。事業者が消費者庁に自主申告した場合は50%減額、一般消費者へ自主返金を行った場合はさらに減額される。
③ 直罰規定(2023年改正で新設)
故意に優良誤認表示や有利誤認表示を行ったときは、100万円以下の罰金。
REDMAGIC 11 Proの国内販売価格は15万7,800円。仮に日本国内で1万台販売されていた場合、売上額は15億7,800万円となり、その3%は約4,734万円。実際の売上規模や不正の開始時期、終了時期、自主返金の有無で課徴金額は変動しますが、相当の金額が事業者に課される計算になります。
2023年改正で追加された「直罰規定」の意義
2023年5月に公布された改正景品表示法(令和5年法律第29号)では、従来の措置命令・課徴金制度に加え、「故意による優良誤認・有利誤認表示」に対する100万円以下の罰金が直接科されうる「直罰規定」が新設されました。これは令和6年10月1日から施行されています。
従来の制度では、違反行為に対してはまず消費者庁が措置命令を出し、それに従わなかった場合に刑事罰が科されるという間接的な仕組みでしたが、直罰規定の新設により、故意が認定されれば措置命令を経ずにいきなり罰金が科されうる状況になりました。REDMAGIC事件のように、アプリ名を検知して動作モードを切り替えるという明らかに意図的な実装が確認されている場合、「故意」の認定は比較的容易と考えられます。
レピュテーションリスクの大きさ
景品表示法違反として措置命令が下された場合、違反事業者の名称は消費者庁ウェブサイトで公表されます。これは事業者にとって、課徴金以上に大きな打撃となることが多いとされています。「景品表示法違反で措置命令を受けた企業」というレッテルは、取引先・一般消費者・投資家すべてに対する信用を損なうからです。
過去の類似事例では、措置命令を受けた事業者が急遽自主返金プログラムを発表し、課徴金の減額を狙うケースも目立っています。景品表示法第11条では「自主返金を行った場合の課徴金減額」が制度化されているため、事業者側にも自主的に救済策を打ち出す経済的インセンティブがあるのです。
消費者庁への申告方法
景品表示法違反の疑いがある表示を発見した場合、一般消費者は消費者庁に違反被疑情報を提供できます。消費者庁は職権探知だけでなく、消費者からの情報提供をきっかけに調査を開始するケースが多くあります。
申告は、消費者庁ウェブサイトの「景品表示法違反被疑情報提供フォーム」から行えます。提供する情報としては、①事業者名、②問題のある表示の内容と媒体(ウェブサイトURL・広告画像・テレビCMの日時など)、③実際のものと表示との乖離を示す根拠(今回であればUL Solutionsの公式発表やPC Watch・4Gamerなどの報道記事)を整えて提供すると、調査が開始されやすくなります。
被害者一人ひとりが声を上げることで、消費者庁の動きが大きく変わります。UL Solutionsという業界標準機関が公式にランキング除外という強い措置を取っている以上、日本の消費者庁としても無視できない状況と言えるでしょう。
問題②:消費者契約法4条1項1号(不実告知)による契約取消

ベンチマークスコアを信じて購入を決めた消費者は、消費者契約法4条1項1号の「不実告知」を根拠に契約を取り消し、代金の返還を請求できる可能性がある。
消費者契約法4条1項1号(不実告知)とは
消費者契約法第4条第1項第1号は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、重要事項について事実と異なることを告げ(不実告知)、消費者が告げられた内容を事実であると誤認して契約を締結した場合、消費者はその契約の申込みまたは承諾の意思表示を取り消すことができると定めています。
ここで重要なのは、事業者の故意は要件ではないという点です。愛知県弁護士会の解説によれば「不実の告知とは、平たくいえば業者が嘘をついた場合です。(中略)業者が客観的事実と異なることを告げた場合をいいます」とされ、故意の立証は不要です。民法上の詐欺(96条)が「故意」を要件とするのに対し、消費者契約法の不実告知は過失や錯誤であっても取消の対象となるため、消費者にとってはハードルが低い救済手段です。
ベンチマークスコアは「重要事項」に該当するか
消費者契約法4条4項は、「重要事項」を次のように定義しています。「物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものの質、用途その他の内容」であって「消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすべきもの」(同項1号)。
ゲーミングスマホの購入判断において、ベンチマークスコアは購入の判断材料として通常影響を及ぼす重要な情報です。実際、REDMAGIC 11 Proの販売促進でも、Snapdragon 8 Elite Gen 5搭載・高いベンチマークスコア・水冷機構による持続性能が訴求ポイントとなっており、購入者もこれを信じて10万円超の高額な支出を決断しています。ベンチマークスコアが「重要事項」に該当する可能性は高いと考えられます。
製品性能の不実告知を認めた裁判例
虎ノ門桜法律事務所の解説では、自動車の燃費性能について「カタログ等の『燃料消費率(国土交通省審査値)』の表示は、国土交通省の定める測定方法による算出値であるということを意味するものであるところ、国土交通省の定める測定方法による算出値ではないのに同測定方法による算出値であるかのように表示し、かつ、実際の国土交通省の定める測定方法による算出値よりも優良な数値を表示した点において、事実と異なるものであり(中略)不実告知に当たると認められます」とする裁判例が紹介されています。
この判例ロジックをREDMAGIC事件に当てはめると、「3DMarkで測定したスコア」として表示されていた数値が、実は「3DMarkアプリを検知した時だけ発動するDiabloモードでの測定値」だった場合、通常の3DMark測定値よりも優良な数値を表示していたことになり、不実告知と評価される可能性があります。
読者の声
取消の期限はあるんですか?今から行動しても間に合いますか?
工藤
消費者契約法7条1項により、「事業者の勧誘行為が不実告知に該当することを知ったときから1年以内」、契約締結から5年以内であれば取消権を行使できます。REDMAGIC事件は2026年3月に発覚したばかりなので、発覚日から1年以内なら行使可能です。早めの対応を強くおすすめします。
不実告知取消の効果
契約が取り消された場合、その契約は遡って無効となります(民法121条)。消費者は支払った代金の返還を請求でき、事業者は商品の返還を受けることになります(民法121条の2)。つまり、「スマホを返して代金を返してもらう」という結果に結びつく制度です。
問題③:民法562条~564条 契約不適合責任による返品・代金減額・損害賠償

商品が広告通りの「品質」を満たしていない場合、民法562条~564条の契約不適合責任に基づき、修補・代金減額・契約解除・損害賠償を販売店に請求できる。
契約不適合責任とは(2020年改正民法)
2020年4月の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に一本化されました。民法第562条は、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる」と定めています。
ポイントは「契約の内容に適合しないもの」という部分です。REDMAGIC 11 Proが「ベンチマーク〇〇点の高性能スマホ」として販売されていたにもかかわらず、実際の通常使用時の性能が広告されたスコアを再現できないのであれば、引き渡された商品は「契約の内容に適合しない」と評価される余地があります。
買主が取れる4つの手段
契約不適合があった場合、買主には以下の4つの救済手段が認められています。
民法562条
① 追完請求
修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを請求。不具合のあるスマホを正常品に交換してもらう。
民法563条
② 代金減額請求
追完請求が叶わない場合、不適合の程度に応じて代金の減額を請求できる。
民法564条・541条
③ 契約解除
催告後も追完されない場合、契約を解除して商品を返品・代金を返還してもらえる。
民法564条・415条
④ 損害賠償請求
売主に帰責事由がある場合、信頼利益と履行利益の両方を含む損害賠償を請求できる。
通知期限に注意:1年以内の通知が必須
民法第566条は、買主が契約不適合を知ったときから1年以内にその旨を売主に通知しないと、原則として契約不適合責任を追及できなくなると定めています。ただし、売主が引渡しの時に不適合を知っていた(悪意)、または重大な過失によって知らなかった(重過失)場合は、この期間制限は適用されません。
REDMAGIC事件は2026年3月に発覚したばかりですが、購入者としては「不適合を知ったとき」から1年以内を意識して早めに通知することが重要です。また、UL Solutionsの検証結果によれば、アプリ名を検知して動作モードを切り替える仕組みは明らかにメーカー側の実装によるものであり、メーカー・代理店には「悪意」あるいは「重過失」が認定される可能性も十分考えられます。
販売店の「メーカーの問題だから」という回答は誤り
販売店(ソフトバンク、Amazon、家電量販店など)は「メーカーの問題であって、販売店には責任がない」と主張する可能性があります。しかし契約不適合責任の請求相手は「売主」=販売店です。購入者が契約を結んだ相手は販売店であって、メーカーではありません。販売店が応じない場合は、弁護士を通じた内容証明郵便での正式請求を検討してください。
問題④:刑法第246条 詐欺罪の成立可能性

詐欺罪(刑法246条)の成立には「故意」「欺罔行為」「錯誤」「処分行為」「財産移転」の全要件が必要。ハードルは高いが、成立すれば10年以下の拘禁刑。
刑法第246条(詐欺罪)の条文と要件
刑法第246条第1項は、「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」と定めています。詐欺罪の成立には、以下の5つの要件すべてが満たされる必要があります。
詐欺罪の成立要件
① 欺罔行為(相手を錯誤に陥らせる行為)
② 錯誤(被害者が真実と異なる認識を持つ)
③ 処分行為(被害者が財産的処分をする)
④ 財産移転(加害者または第三者への財産の移転)
⑤ 故意(加害者に欺罔の意思があること)
REDMAGIC事件で詐欺罪成立のハードル
詐欺罪は民事上の不法行為と異なり、「故意」の立証が必須です。つまり、メーカーや販売代理店が「ベンチマークスコアを水増しして消費者を騙す意図があった」ことを、捜査機関が立証できなければ詐欺罪は成立しません。
Fastlane Japanは2026年3月22日の見解で「自社で取り扱う製品には強い自信をもっており、ユーザーの信頼を裏切る不当な手法を用いる意向は一切ない」と断言しています。一方、メーカー側については、アプリ名を検知してモード切替を行う機能の実装自体は意図的な設計と考えざるをえないため、「故意」が認定される余地はあります。しかし日本の捜査機関が中国メーカーに対して刑事責任を追及するのは実務上極めて困難です。
したがって、詐欺罪での刑事告訴は「理論上は可能だが実務上はハードルが高い」という位置付けです。購入者の実効的な救済手段は、景品表示法違反の申告、消費者契約法に基づく取消、契約不適合責任に基づく返品・返金が中心となります。
海外の集団訴訟事例から学ぶ日本の実効性
前述の通り、2013年のGalaxy S4事件では米国で集団訴訟が起こり、2019年10月にSamsungは原告らと和解しました。和解条件として、Samsungは2024年まで「ベンチマークテストに対するチート行為を行わない」ことに同意しています。この和解は、集団での法的アクションが実効的な救済を生んだ典型例です。
日本国内でも、消費者契約法12条は適格消費者団体による差止請求訴訟制度を定めており、個人では戦いにくい大企業相手のトラブルでも、適格消費者団体を通じた差止請求が可能です。REDMAGIC事件のように被害者が多数に及ぶ事案では、消費者団体への情報提供も有効なアプローチの一つです。
民事と刑事を組み合わせた包括的救済
ここまで解説した4つの法的手段(景品表示法・消費者契約法・契約不適合責任・詐欺罪)は、互いに排他的ではありません。たとえば、景品表示法違反で消費者庁に申告しつつ、販売店には契約不適合責任に基づく契約解除を通知し、同時に消費生活センターに相談するといった複合的アプローチが可能です。一つの手段で応じない相手でも、複数のルートを同時に使うことで交渉力が飛躍的に高まります。
購入者が取れる5つの具体的なアクション

購入者が取るべき行動は「①証拠保全 →②販売店に通知 →③総代理店に申入 →④消費生活センター →⑤弁護士相談」の5ステップ。早めの行動が期限切れを防ぐ。
STEP1:購入証拠と不正情報の保全
まず最優先で行うべきは証拠の保全です。以下の3点をすべて整えてください。
- 購入時のレシート・注文確認メール・クレジットカード明細(購入日・店舗・金額の証拠)
- UL Solutionsの公式発表ページ(PC Watch・4Gamerなどメディア記事のURLと日付)
- メーカー広告・販売サイト・レビュー記事に記載されていたベンチマークスコアのスクリーンショット
ウェブ上の情報は削除・修正される可能性があるため、必ずスクリーンショットと日時を保全してください。
STEP2:販売店への通知(民法566条対応)
販売店(購入した店舗)に対し、契約不適合責任(民法562条~564条)に基づく以下のいずれかを通知します。
- 代替物の引渡し(正常品への交換)
- 代金減額
- 契約解除と代金返還
通知は口頭ではなく書面(メール・配達証明郵便など日付と内容が記録される手段)で行ってください。販売店が交渉に応じない場合、次のステップに進みます。
STEP3:総代理店(Fastlane Japan)への申入
並行して日本総代理店Fastlane Japanに対し、メーカーへの申入れと対応策の提示を求めます。Samsung Galaxy S4の前例(集団訴訟→和解)を踏まえれば、メーカー側も対応を余儀なくされる可能性があります。個別対応が得られない場合は、次のステップで公的機関を活用します。
STEP4:消費生活センターへの相談
消費者ホットライン「188(いやや)」に電話すると、最寄りの消費生活センターに繋がります。消費生活相談員が事業者との間に入ってあっせん(示談斡旋)してくれる場合があり、弁護士費用なしで解決する可能性もあります。
同時に、消費者庁のウェブサイトから景品表示法違反の被疑情報を提供することも検討してください。消費者庁が職権で調査を開始すれば、事業者側が自主返金に動く可能性が高まります。
STEP5:弁護士への相談
販売店・代理店・公的機関での解決が難しい場合は、弁護士に相談します。消費者契約法4条の取消権は発覚から1年、契約不適合責任の通知期限も1年なので、期限を意識した迅速な対応が求められます。複数の購入者で連絡を取り合い、集団訴訟の形で進めることも選択肢の一つです。
読者の声
弁護士費用って高いイメージがあります。15万円のスマホのために弁護士に頼んだら赤字じゃないですか?
工藤
おっしゃる通り、個別に弁護士に依頼すると費用倒れのリスクがあります。だからこそ、①まず消費生活センター(無料)、②集団訴訟の動きに乗る、③弁護士保険で備えておく、という3段階の備えが大事です。弁護士保険ミカタなら、1日98円〜の保険料でこうしたトラブルに備えることができます。
よくある質問(FAQ)

Q1. 購入してしばらく経っていますが、今から返品請求できますか?
契約不適合責任(民法566条)は、不適合を知ったときから1年以内の通知が必要です。REDMAGIC事件は2026年3月発覚なので、発覚日から1年以内であれば請求可能。消費者契約法4条の取消も、不実告知を知ったときから1年・契約から5年以内です。購入時期が古くても、不正が発覚した日から起算できる余地があります。
Q2. ベンチマークスコアだけで買ったわけではない場合は?
「購入判断に通常影響を及ぼすべきもの」であれば重要事項に該当します。ベンチマークスコアが唯一の決め手でなくても、デザイン・水冷機構・Snapdragon 8 Elite Gen 5などと並ぶ判断材料の1つであれば「重要事項」性は否定されにくいと考えられます。総合判断です。
Q3. メーカー(中国)ではなく日本の販売店に請求できる?
契約不適合責任の請求相手は「売主=販売店」です。購入者が契約を結んだ相手は販売店であり、メーカーではありません。販売店が「メーカーの問題」と主張しても、法的には販売店に契約不適合責任があります。販売店→代理店→メーカーの構図で、販売店がメーカーへ求償する流れです。
Q4. 代金の何割くらい返してもらえる?
契約解除が認められた場合は全額返金が原則です(ただし使用期間に応じた減額の主張は予想されます)。代金減額請求の場合は「不適合の程度に応じて」決まるため、最大24%スコア水増しという事実が1つの参考数値になる可能性があります。ただし具体的な金額は事案の交渉次第です。
Q5. 動画検証を信じていいの?裁判で証拠になる?
さいちょう氏の個人検証動画単独では証拠力に限界がありますが、今回はベンチマーク提供元であるUL Solutions(3DMark)が公式に検証・公表し、公式ランキングから除外した点が決定的です。UL Solutionsの公式発表は業界標準の一次情報として、裁判でも十分な証拠価値を持ちえます。
Q6. 弁護士費用が心配で動けません
相手が大企業になるほど、個人で声を上げるのは想像以上に大変です。「明らかにおかしい」と分かっていても、弁護士費用の重さで諦めてしまう人は少なくありません。弁護士保険に備えておけば、いざというときに費用の心配で足が止まることが減り、行動しやすくなります。弁護士保険ミカタなら1日98円〜で、こうしたトラブルへの備えを始められます。
「買って後悔したまま終わらせない」ための備えがあるかどうか
REDMAGIC事件のように「確かにおかしい」と分かっても、弁護士費用の不安で動けずに終わる人がとても多い。備えがあるかどうかで、泣き寝入りするか・声を上げられるかが変わってくる。
今回のREDMAGIC事件を見て、多くの方がこう感じたはずです。「15万円も出して買ったのに、ベンチマークが公式に不正認定された。でも自分が声を上げても、相手はグローバル企業。弁護士を頼むのにまた10万、20万とかかるなら、もう諦めるしかない」と。
これは今回のスマホに限った話ではありません。高額な車・家電・住宅設備・ソフトウェア――高い買い物ほど、後から「広告と違う」と気づいても、費用の壁で諦めてしまう構造があります。そしてその泣き寝入りが、メーカー側に「こう売っても消費者は黙っている」という誤ったメッセージを送り続けてしまう。
💡 備えておく人と、備えていない人の差
「弁護士を頼む=一から費用を工面する」と考えると、多くの人はそこで止まります。けれど、あらかじめ弁護士保険に入っておけば、同じトラブルに直面したときに選べる選択肢が一段増えます。
「動けるか/諦めるか」という最初の分かれ道で、備えている人は前に進みやすく、備えていない人は止まりやすい。それが現実です。
弁護士保険ミカタは1日98円〜から加入できます。1日98円というのは、缶コーヒー1本より安い金額です。その備えがあるだけで、「確かにおかしい」と思ったときに動きやすくなるのなら、入っておいて損をする理由のほうが少ないのではないでしょうか。
ひとつだけ、お伝えしておきたいことがあります。弁護士保険には多くの場合、加入してからすぐには使えない「待機期間」があります。トラブルが起きてから駆け込んでも間に合わないケースがほとんどということです。つまり、何もないタイミングで入っておくのが本来の使い方。「今は困っていない」という今こそ、一番備えに向いた時期なのです。
この記事のポイント
- UL Solutions(3DMark)が2026年4月9日に公式発表:REDMAGIC 11 Pro/Pro+は公開版ベンチマークで非公開版より最大24%高いスコアを記録し、3DMark公式ランキングから除外された。
- 景品表示法第5条第1号の優良誤認表示に該当する可能性があり、事業者には措置命令+課徴金(売上額の3%・最大3年分)、故意の場合は100万円以下の罰金(2023年改正)が課されうる。
- 消費者契約法4条1項1号の不実告知に該当する場合、消費者は契約を取り消し、代金の返還を請求できる。故意の立証は不要、発覚から1年・契約から5年以内に行使する必要がある。
- 民法562条~564条の契約不適合責任により、購入者は販売店に対し①追完請求、②代金減額、③契約解除、④損害賠償の4つの手段を選択できる。
- 刑法246条の詐欺罪は故意の立証が必要でハードルが高いが、2013年Galaxy S4事件では米国で集団訴訟が提起され、Samsungは和解に応じた前例がある。
- 購入者の5ステップ対応:①証拠保全→②販売店に通知→③総代理店(Fastlane Japan)に申入→④消費生活センター(188)→⑤弁護士相談。1年以内の通知期限に注意。
- 弁護士保険(1日98円〜)に加入しておけば、こうした製品不正・消費者トラブルが起きたときに、弁護士費用の心配なく動ける環境が整う。
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主な引用元:UL Solutions公式発表(2026年4月9日・3DMarkランキング除外)、PC Watch「REDMAGIC 11 Proのスコア、不正最適化で3DMarkランキングから排除」(2026年4月)、4Gamer.net「REDMAGIC 11 Pro/Pro+が3DMarkでのベンチマーク不正で公式ランキングから除外される」(2026年4月13日)、ITmedia NEWS「スマホ業界の巨大な闇──告発動画きっかけにスマホのベンチマークブースト問題が再燃」(2026年3月)、YouTubeチャンネル「さいちょう」検証動画(2026年3月21日公開)、Fastlane Japan株式会社公式見解(2026年3月22日)、消費者庁「表示規制の概要」「優良誤認とは」、消費者庁「景品表示法への課徴金制度導入について」、e-Gov法令検索「不当景品類及び不当表示防止法」「消費者契約法」「民法」「刑法」、政府広報オンライン「契約トラブルから身を守るために、知っておきたい消費者契約法」、愛知県弁護士会「消費者契約法について」、虎ノ門桜法律事務所「製品性能の不実告知があったとして、売買契約の取消が認められた裁判例」、財経新聞「Galaxy S4のベンチマーク偽装に対する集団訴訟、Samsungと原告が和解」(2019年10月)、すまほん!!「ベンチマーク詐欺 最新情報まとめ」
工藤 辰浩
リーガルベスト代表 / 弁護士保険ミカタ正規代理店
リクルート在籍中に「世の中の負を解決したい」という想いを抱き、2017年に東京で弁護士保険代理店リーガルベストを創業。以来8年間で400名以上のお客様の弁護士保険相談に伴走。多くの弁護士セミナーへの参加、30名以上の弁護士との交流を通じて培った知見をmomegoto.jpで発信しています。監修弁護士様も募集中です。お気軽にお問い合わせください。
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本記事は一般的な法律情報の提供および弁護士保険代理店としての知見共有という位置づけであり、特定の法的助言を構成するものではありません。個別の事案に関する法的判断が必要な場合は、弁護士にご相談ください。記事内容は2026年4月時点の公開情報に基づいており、今後の法改正や事態の進展により内容が変更される場合があります。なお、本記事は特定のメーカー・販売代理店を誹謗中傷する意図はなく、報道された一次情報をもとに法的観点を整理したものです。

