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外国人の不法就労|させた側・した側の罪と罰則・知らなかった場合も対象か徹底解説
労働トラブル

外国人の不法就労|させた側・した側の罪と罰則・知らなかった場合も対象か徹底解説

👤 こんな方に読んでほしい記事です

  • 外国人スタッフを雇用しているが、在留資格の確認がきちんとできているか不安な経営者・人事担当者
  • 採用した外国人が実は不法滞在だったと発覚し、どうすればいいかわからない
  • 人材紹介会社や派遣会社経由で外国人を受け入れたが、自社にも責任が及ぶのか知りたい
  • 留学生・技能実習生・特定技能など資格の種類による就労制限の違いを正確に理解したい
  • 茨城や農業・製造業・飲食業など外国人労働者が多い業種で働いていてコンプライアンスが心配な方

2026年4月、茨城県内の農業法人役員が出入国管理及び難民認定法(入管法)違反(不法就労助長)の容疑で再逮捕されたと毎日新聞が報じました。茨城県は出入国在留管理庁の集計によると不法就労外国人が2025年時点で3,518人と4年連続で全国最多であり、農業分野に集中しているという深刻な実態があります。

不法就労は、外国人本人が処罰されるだけでなく、雇った側も「不法就労助長罪」という重い刑事罰の対象になります。しかも、「知らなかった」「確認し忘れた」という言い訳は、入管法上原則として通用しません。外国人の採用が一般化している今、この問題は農業や製造業だけでなく、飲食・小売・IT・介護など全ての業種に関わる現実のリスクです。

この記事では、不法就労の法的定義・3つの類型・させた側の刑事責任(入管法第73条の2)・した側の刑事責任(入管法第70条)・「知らなかった場合」の法的評価・在留カード確認の実務・摘発後の対応まで、一次情報である入管法の条文・警視庁公表データ・出入国在留管理庁のデータに基づいて体系的に解説します。

✓ POINT

この記事でわかること

  • 不法就労とは何か——3つの類型と具体的なケース(入管法第19条・第70条)
  • させた側(雇用主)の罪——入管法第73条の2「不法就労助長罪」と2025年の厳罰化
  • した側(外国人本人)の罪——刑事罰・退去強制・上陸拒否の仕組み
  • 「知らなかった」は通用しない——過失の推定と無過失を立証するための要件
  • 在留カード確認の正しい実務手順とよくある見落としポイント
  • 摘発された・発覚した場合の対応フローと弁護士への相談タイミング

不法就労の現状——なぜ今、これほど問題になっているのか

不法就労外国人の現状と全国データ・茨城県の状況を示す図

結論

全国の不法就労外国人は2025年時点で13,435人(出入国在留管理庁集計)。うち茨城県が3,518人と4年連続全国最多。農業分野に集中しており、人手不足を背景とした構造的問題として拡大している。

茨城県の農業法人役員再逮捕——氷山の一角を示す事件

2026年4月、茨城県内の農業法人役員が不法就労助長の容疑で再逮捕されたとの報道は、全国的な問題の一端を示す出来事です。「再逮捕」という事実が示すように、一度摘発されても同様の行為を繰り返すケースがあり、悪質性の高い事案として捜査当局が対応しています。

茨城県はなぜこれほど不法就労が多いのでしょうか。出入国在留管理庁のデータによれば、2025年の全国不法就労外国人13,435人のうち茨城県が3,518人を占め、4年連続全国最多となっています。その背景には、茨城県が全国3位の農業産出額を誇る「農業大国」であり、農繁期に大量の労働力を必要とする農業の構造的な人手不足があります。報道によれば、資格を持たずに働く外国人の7割が農業に従事していたとされています。

こうした状況を受け、茨城県は2026年度から不法就労外国人を雇う事業者への通報があった場合に報奨金を支払う「通報報奨金制度」を始めることを決定しました。都道府県レベルでは珍しい制度で、摘発強化への本気度を示しています。

なぜ「悪気のない」事業者も摘発されるのか

警視庁が公表したデータによれば、令和5年(2023年)の不法就労助長罪の検挙件数は278件で、犯罪インフラ事犯の中で最も多くなっています。そして摘発事業者の中には、「違法状態になっていると気づかなかった」「確認が漏れていた」というケースが相当数含まれています。

外国人雇用が一般化したことで、中小の農業法人・製造業・飲食店・派遣会社など、入管法の知識が十分でない現場での雇用が増加しています。入管法の構造を知らないまま採用し、後から摘発されるという「知らなかった落とし穴」が広がっているのが現実です。この記事はそのリスクを正確に伝えることを目的としています。

工藤辰浩

工藤

「人手不足だから」「紹介会社に任せているから」は免責の理由になりません。入管法上、雇用主には在留資格を確認する義務があり、確認を怠った過失は処罰対象です。まずは法律の構造を正確に理解することが自社を守る第一歩です。

不法就労とは何か——法的に「不法就労」になる3つの類型

不法就労の3つの類型(不法滞在・不許可・資格外)の比較図

結論

入管法上の不法就労は「不法滞在者の就労」「就労許可のない在留資格者の就労」「許可された範囲を超えた就労」の3類型。いずれも雇用主が助長すれば不法就労助長罪が成立する。

類型①「不法滞在者が働く」——密入国・オーバーステイ

最もわかりやすい類型が、そもそも日本に合法的にいる資格のない外国人が働くケースです。密入国(不法入国)した外国人、または在留期限を過ぎてオーバーステイ(不法残留)している外国人が就労すれば、それだけで不法就労になります。

注意すべきなのは、「一昨日まで在留資格があったが今日から切れている」という状態も不法残留です。在留期限の1日でも超過が発生した段階で違法状態となります。雇用主がその外国人を継続して働かせていれば、不法就労助長罪の対象となります。また、退去強制命令を受けた外国人(被退去強制者)を働かせる場合も同じ類型です。

類型②「就労許可のない在留資格者が働く」——短期滞在・留学等

日本に合法的に在留しているものの、就労が認められていない在留資格の外国人が働くケースです。入管法第19条第1項は、「別表第1の在留資格を持つ外国人は、その在留資格に応じた活動以外の就労活動を行ってはならない」と定めています。

就労が認められない主な在留資格には以下のものがあります。短期滞在(観光・ビジネス目的)、留学(ただし資格外活動許可を取れば週28時間まで可)、家族滞在(同じく資格外活動許可があれば週28時間まで可)、文化活動、研修などです。観光ビザで来日した外国人を農繁期だけ雇うといった行為は、典型的なこの類型の不法就労助長に当たります。

類型③「許可された範囲を超えて働く」——資格外活動・時間超過

3番目は、在留資格が存在し就労許可もあるものの、許可された業務範囲や時間を超えて働くケースです。たとえば「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持つ外国人にレジ打ちや工場ラインでの単純作業をさせることは、在留資格に対応する活動から外れるため不法就労となります。

留学生の場合、資格外活動許可があっても原則として1週間に28時間が上限です(長期休暇期間中は1日8時間まで)。これを超えて働かせた場合も不法就労助長罪が成立します。ラーメンチェーン「一蘭」の社長らが書類送検された事案もこの類型です——留学生を法定時間超過で就労させていたことが問題とされました。

⚠️

見落としが多いケース——「技能実習生」の業務範囲
技能実習生は、認定された実習計画に記載された業務しか行えません。農業技能実習生に農作業以外の倉庫作業や運搬業務を行わせるだけで不法就労助長になりえます。「うちは技能実習生だから大丈夫」は過信です。実習計画の内容と実際の業務内容が一致しているかを常に確認してください。

させた側(雇用主)の罪——不法就労助長罪(入管法第73条の2)

不法就労助長罪の法定刑と両罰規定・対象者の整理図

結論

2025年6月の改正入管法施行により「5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科あり)」に厳罰化。改正前の「3年以下・300万円以下」から大幅引き上げ。両罰規定により法人も同時に罰金対象。

入管法第73条の2——条文の構造と成立要件

不法就労助長罪は、出入国管理及び難民認定法(入管法)第73条の2第1項に規定されています。条文は次の3つの行為類型を列挙しています。

第1号は「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」です。最も一般的なケースで、雇用主が直接外国人を不法就労させた場合が該当します。第2号は「外国人に不法就労活動をさせるために、これを自己の支配下に置いた者」です。不法就労させる目的で外国人を囲い込んだり、住居を提供して管理下に置いたりする行為です。第3号は「業として、外国人に不法就労活動をさせる行為または前号の行為に関しあっせんした者」です。不法就労先を紹介するブローカーや、不法就労者を組織的に派遣する仲介業者が対象となります。

2025年6月——改正入管法による厳罰化

2025年6月に施行された改正入管法により、不法就労助長罪の法定刑が大幅に引き上げられました。改正前は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金(または両方の併科)」でしたが、改正後は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金(または両方の併科)」となりました。懲役・罰金ともに2/3程度の引き上げです。

この改正は外国人労働者の権利保護強化と悪質な雇用者への抑止力向上を目的としており、政府による外国人雇用コンプライアンスへの姿勢を明確に示すものです。初犯でも起訴されて有罪となれば懲役・罰金のどちらかまたは両方が科され、罰金を選んでも最大500万円という事業者にとって深刻な経営リスクとなっています。

改正前(〜2025年5月)

3年以下の懲役
300万円以下の罰金

改正後(2025年6月〜)

5年以下の懲役
500万円以下の罰金

両罰規定(入管法第76条の2)——法人にも罰金

入管法第76条の2の両罰規定により、行為者個人が処罰されるだけでなく、その行為者が属する法人(会社)も罰金刑の対象となります。つまり、農業法人の担当者が不法就労助長罪で摘発された場合、その担当者個人への懲役刑と、法人への罰金刑が同時に科される可能性があります。法人にとっては最大500万円の罰金に加え、社会的信用の喪失・取引先からの信頼喪失・場合によっては許認可の取消という二次的ダメージも伴います。

直接雇用していなくても対象——派遣・請負・ブローカー

重要なのは、直接雇用関係がなくても不法就労助長罪の対象となる点です。人材派遣会社が不法就労者を派遣先に送り込んでいた場合、派遣会社の担当者が第1号または第3号で問われます。一方、派遣先の会社が「派遣会社から来た人だから大丈夫」と在留資格の確認を怠っていた場合、派遣先も第1号(事業活動に関し外国人に不法就労活動をさせた者)として問われる可能性があります。令和2年11月に千葉県で起きた事案では、技能実習等の在留資格で入国したベトナム人を水産加工会社に派遣していた人材派遣会社社員5人が逮捕されており、派遣チェーン全体がリスクを共有することを示しています。

摘発のその他の影響——廃業・許認可取消のリスク

不法就労助長罪の摘発は刑事罰だけにとどまりません。外国人経営者であれば強制退去事由にもなり得ます。人材派遣業・有料職業紹介業を営む会社であれば、労働者派遣法・職業安定法上の許可取消のおそれがあります。技能実習生を受け入れていた場合は、技能実習法第10条に基づき5年間の技能実習生受け入れ停止という行政処分も課される可能性があります。一度の摘発が廃業・倒産に直結するリスクがある点を認識しておく必要があります。

読者

読者の声

うちは農繁期だけ短期で外国人を雇っているんですが、それも対象になりますか?

工藤辰浩

工藤

期間・日数に関係なく対象です。1日だけ手伝ってもらった場合でも、その外国人が就労資格を持っていなければ不法就労助長罪が成立し得ます。短期・臨時雇用だからといって在留資格の確認を省略するのは最もリスクの高い行動です。

した側(外国人本人)の罪——入管法第70条と退去強制

不法就労外国人本人への罰則・退去強制・上陸拒否の仕組み図

結論

不法就労した外国人本人は刑事罰(懲役・罰金)+退去強制(強制送還)+上陸拒否期間(原則5年〜10年)という三重の制裁を受ける。将来の日本での就労機会が永続的に閉ざされるリスクがある。

刑事罰——入管法第70条の罰則

不法就労した外国人本人に対しては、入管法第70条が適用されます。不法入国・不法残留を行い就労した場合は3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金(または併科)が科されます。資格外活動(就労許可なく働いた場合)は1年以下の懲役もしくは禁錮または200万円以下の罰金(または併科)です。資格外活動を専ら行っていると明らかに認められる場合は、より重い3年以下の懲役もしくは禁錮または300万円以下の罰金が適用されます(入管法第70条第1項第4号)。

退去強制——強制送還と上陸拒否期間

刑事罰に加え、不法就労外国人は退去強制(強制送還)の対象となります(入管法第24条)。退去強制処分を受けた場合の上陸拒否期間は原則として初回5年間、2回目以降は10年間です。この期間中は日本に入国できないため、将来的に日本で合法的に働きたいと考えている外国人にとっては深刻なリスクです。

一方で、自ら入管に出頭し速やかに帰国する意思がある場合など一定の条件を満たせば「出国命令制度」を利用でき、上陸拒否期間が1年間に短縮される制度もあります。ただし出国命令制度を利用できるかどうかには条件があり、すべての不法滞在者が利用できるわけではありません。

技能実習生・特定技能の場合——取消と受け入れ停止

技能実習生が実習計画外の業務を行っていた場合(類型③)、技能実習計画の取消処分が下され、受け入れ機関は最大5年間の技能実習生受け入れ停止となります(技能実習法第10条)。特定技能外国人が認定された業務範囲外の業務を行っていた場合も同様の行政処分リスクがあります。雇用主側にとっては人材確保の観点からも深刻な影響です。

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「知らなかった」は通用するのか——過失の推定と無過失立証

知らなかった場合の過失推定と無過失立証の判断構造図

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入管法第73条の2第2項は明文で「知らないことを理由として処罰を免れることができない」と規定。ただし「過失のないとき」は例外として処罰されない。つまり「知らなかった」は免責にならないが「過失がなかったことを立証できた」場合には免責される。

入管法第73条の2第2項——「知らなかった」の法的扱い

入管法第73条の2第2項は次のように規定しています。「前項各号に該当する行為をした者は、次の各号のいずれかに該当することを知らないことを理由として、同項の規定による処罰を免れることができない。ただし、過失のないときは、この限りでない」。

この条文の構造は非常に重要です。原則は「知らなかったことを理由に処罰を免れることはできない」つまり、知らなかったという主張は免責事由になりません。ただし例外として「過失のないとき」は処罰されない。これは「知らなかった」という主観的な事情ではなく、「確認すべき義務を尽くしたか」という客観的な行為が問われることを意味します。

「過失がない」と認められるために——何を確認すれば免責されるか

では、「過失がなかった」と認められるためには何が必要なのでしょうか。実務上の基準として確立しているのは、①在留カードを確認した、②在留資格の種別と就労可能な業務範囲を確認した、③在留期限を確認した、④資格外活動許可の有無を確認した(留学・家族滞在の場合)、⑤確認した記録を保存した——これらを適切に実施していたことです。

アトム弁護士事務所が公表している不起訴事例では、理事長という立場で直接の採用業務を把握していなかったケースで、不法就労助長罪の事実を知らなかった点を主張し、無過失の意見書等を提出して不起訴を獲得した事例があります。ただしこれはあくまで個別事案であり、立場・確認体制・証拠の状況によって判断は大きく異なります。

「過失あり」と判断されやすいケース

⚠️

過失と判断されやすい4つの状況
在留カードをまったく確認していない(「面接で日本語が話せたから大丈夫と思った」等)
在留カードは見たが期限や資格外活動許可欄を確認していない(コピーもとっていない)
紹介会社や派遣会社に確認を丸投げし、自社では一切チェックしていない
在留カードの偽造を疑う余地があったにもかかわらず確認しなかった(不自然な点を見逃した)

在留カード番号失効情報照会システムの活用

出入国在留管理庁は「在留カード等番号失効情報照会」システムを提供しており、カード番号を入力することで在留カードの有効性を確認できます。これを活用することは「過失がなかった」を立証する有力な証拠になります。システムはウェブ上で無料利用できます(ただし土日祝日および毎日午後5時〜8時頃はメンテナンスのため使用不可)。

採用時の確認だけでなく、雇用継続中の定期的な確認も重要です。在留期限が更新された際には必ず新しい在留カードを確認し、記録に残すことが「継続的な過失のない確認体制」を示す証拠となります。

読者

読者の声

採用時に在留カードのコピーはとっています。でもそれだけで十分ですか?

工藤辰浩

工藤

コピーをとること自体は大切ですが、それだけでは不十分な場合があります。①カードの有効期限、②在留資格の種別、③就労可能な業務範囲、④資格外活動許可欄(留学・家族滞在の場合)——これらを確認したうえで記録として残しておくことが「過失なし」を主張する根拠になります。また在留期限が来たときの再確認も必須です。

在留カード確認の正しい実務——チェックリストと見落としポイント

在留カードの確認ポイントと就労可能な在留資格一覧図

就労可能な在留資格の一覧——基本の理解

外国人が日本で就労できるのは、在留資格によって異なります。就労制限なく働ける在留資格(身分系)には、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者があります。これらの在留資格を持つ外国人は、業種・職種を問わず就労できます。

就労可能な在留資格(就労系)には、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習などがあります。ただしこれらは在留資格に対応した業務しか行えません。

就労が認められない在留資格には、短期滞在、留学、家族滞在、文化活動などがあります(ただし留学・家族滞在は資格外活動許可があれば週28時間まで可)。

在留カード確認の実務チェックリスト

採用時の在留カード確認チェックリスト
☑ 在留カードの「有効期限(満了日)」を確認した
☑ 「在留資格」欄を確認し、就労可能な資格かを判断した
☑ 「就労制限の有無」欄を確認した(「就労不可」「在留資格に基づく就労活動のみ可」等)
☑ 留学・家族滞在の場合、「資格外活動許可」欄の有無を確認した
☑ ICチップが搭載されていることを確認し、偽造の疑いがないか目視チェックした
☑ 出入国在留管理庁の「在留カード等番号失効情報照会」で番号の有効性を確認した
☑ 在留カードのコピーを保管し、確認者・確認日を記録に残した
☑ 在留期限が近づいたら更新後の新カードを再確認する体制が整っている

よくある見落とし① 「更新中」シールの確認

在留期限が満了しても更新申請を行っている外国人には、在留カードに「在留期間更新等手続中」のシールが貼られる場合があります。このシールがある場合、申請を行っている証として在留資格を持ったまま在留している扱いとなりますが、永続するわけではありません。更新の結果(許可・不許可)を必ず確認する必要があります。

よくある見落とし② 留学生の「週28時間」管理

留学生のアルバイト管理は特に注意が必要です。資格外活動許可があれば週28時間まで就労可能ですが、この時間管理を店舗や現場の担当者に任せきりにしていると、気づかないうちに超過するケースがあります。複数の職場で掛け持ちしている場合は合算で28時間のため、自社分だけを管理していても超過している可能性があります。タイムカードや労働時間の記録を定期的にチェックし、超過の兆候を早期に把握する体制が必要です。

よくある見落とし③ 技能実習生の業務範囲

技能実習生は認定された実習計画の範囲内の業務しか行えません。農業系の技能実習生に収穫・梱包以外の作業(倉庫内の荷捌き・車両の運転・接客など)をさせた場合でも不法就労助長罪の問題が生じます。実習計画の内容と実際の指示業務が一致しているかを現場レベルで確認する管理体制が欠かせません。

不法就労が発覚した場合の対応フロー

不法就労発覚時の対応フローチャート

発覚の契機——突然の警察・入管来訪

不法就労助長罪の摘発が始まる場合、多くは「ある日突然、警察が来て外国人を逮捕していった」「入管の調査に来て工場のラインが全停止せざるを得なくなった」という形で始まります。事前の通知なく行政機関が来訪し、その場で調査・逮捕が行われることも珍しくありません。このような事態が起きた場合の初動対応が、その後の刑事・行政上の扱いに大きく影響します。

Step1:弁護士への即時相談——24時間以内が最重要

警察・入管による調査・逮捕が行われた場合、または自社に調査が及ぶ可能性が生じた場合、最初にすべきことは弁護士への相談です。逮捕後は原則として48時間以内に検察へ送致、その後24時間以内に勾留決定の場面があり、この初期段階での弁護士の関与が処分結果に決定的な影響を与えます。

特に不法就労助長罪の事案では、「過失がなかった」という無過失の主張・立証が重要であり、これは法的知識を持つ弁護士でなければ適切に行えません。入管法・出入国管理法に精通した弁護士に速やかに連絡することが最優先事項です。

Step2:証拠の保全——在留確認の記録を集める

弁護士が着手する前後に、雇用主としてできることは証拠の保全です。採用時の在留カードのコピー・確認記録・タイムカード・給与明細・採用担当者の業務メモ・紹介会社とのやりとり(メール・書類)など、当時の確認体制を示す資料を可能な限り集めておきます。これが「過失なし」を主張するための材料になります。

Step3:雇用の即時停止——継続就労による追加被害を防ぐ

不法就労が発覚した時点で、当該外国人の就労を即時停止してください。摘発後も就労を継続させると、継続的な違法行為として悪質性が高く評価され、量刑に不利に働きます。また入管庁に対して任意で情報提供・自主申告を行うことが、その後の行政対応上有利に働く場合があります。

Step4:再発防止体制の構築

刑事事件が不起訴または処罰が確定した後は、速やかに外国人雇用の確認体制を整備・強化することが求められます。具体的には、採用時の在留カード確認チェックリストの整備、確認担当者の明確化、定期的な在留期限の管理システム構入、労働時間管理の徹底(特に留学生)などです。弁護士・行政書士・社会保険労務士などの専門家と顧問契約を結び、継続的なコンプライアンス体制を構築することが再発防止と「万が一の場合の無過失立証」に直結します。

弁護士費用を事前に備えておく重要性
不法就労問題が発覚した場合、弁護士費用は着手金だけで数十万円〜になることも珍しくありません。しかも「突然の逮捕」という形で始まることが多く、費用の準備ができていない状態で対応を迫られます。農業・製造業・飲食業など外国人労働者と関わりの多い事業者の方は、今問題が起きていない穏やかな今だからこそ、弁護士費用への備えを整えておくという発想が重要です。弁護士保険は1日98円〜という手軽さで法的トラブル全般に備えられます。リーガルベスト取扱いの弁護士保険ミカタは、外国人雇用問題に限らず、労働トラブル・近隣問題・契約紛争・家族間の法律問題まで、日常のあらゆる場面で「弁護士に相談できる」安心を提供しています。トラブルが起きてから保険を探しても間に合わないのが保険の性質。ぜひ一度、公式サイトで補償内容をのぞいてみてください。

よくある質問(FAQ)

不法就労・不法就労助長罪のよくある質問と回答

Q1. 在留カードを見せてもらったが、後から偽造だったと判明した場合は?

ℹ️

「偽造だと知らなかった」という主張は有効ですが、偽造を疑う余地があった不自然な点を見逃した場合は過失と判断される可能性があります。在留カードの偽造チェックには、①ICチップの有無の確認(本物はICチップ搭載)、②出入国在留管理庁の番号失効照会システムの活用、③表面の印字・ホログラムの確認が有効です。不自然な点があれば採用を見合わせ、専門家(行政書士・弁護士)に相談することを強くお勧めします。

Q2. 外国人を直接雇用せず、派遣会社経由で受け入れている場合も責任を負いますか?

⚠️

負います。入管法第73条の2第1号は「事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者」と規定しており、直接の雇用関係がなくても、実際に不法就労させた事業者は対象となります。「派遣会社が確認しているから大丈夫」は通用しません。受入事業者としても在留資格の確認義務を負っており、派遣会社に丸投げしていたことが過失と判断されるリスクがあります。

Q3. 留学生を週28時間以内で雇っていたが、別のバイト先でも働いていたと後から知った場合は?

ℹ️

週28時間の制限は全職場の合算です。自社での勤務が週28時間以内でも、他の職場との合算で超過していた場合は不法就労となります。自社の労働時間管理だけでは不十分であり、採用時に他の就労先の有無を確認し、合算で制限を超えないよう指導・管理する義務があります。「知らなかった」という主張が過失なしと認められるかは、確認体制の有無によって判断されます。

Q4. 技能実習生が実習計画外の作業をしていたが、本人が希望したのでさせていた。問題ですか?

⚠️

問題です。本人の同意・希望があっても、実習計画に記載されていない業務を行わせることは不法就労助長罪の対象となり得ます。「本人が望んだ」という事情は法的に免責理由になりません。技能実習生に対しては、認定された実習計画を厳守させる義務が受け入れ機関にあります。

Q5. 不法就労が発覚し逮捕されてしまった。釈放されるためにどうすればいいですか?

すぐに弁護士に連絡してください。逮捕後は接見禁止がつく場合があり、家族が連絡できないケースもあります。逮捕後72時間以内の弁護士の関与が、勾留決定・処分決定に最も大きな影響を与えます。在留資格確認の記録・証拠の保全を弁護士と一緒に行い、「過失がなかった」または「悪質性が低い」ことを示す弁護活動が早期釈放・不起訴・執行猶予につながります。

Q6. 外国人本人(不法就労した側)はどうなりますか?

ℹ️

入管法第70条による刑事罰(懲役・罰金)に加え、退去強制処分(強制送還)の対象となります。退去強制処分を受けた場合、原則として5年〜10年の上陸拒否期間が発生し、その間は日本に入国できません。自ら入管に出頭し速やかな帰国意思を示す場合、出国命令制度を利用して上陸拒否期間を1年に短縮できる可能性があります(条件あり)。いずれにせよ将来の合法的な日本での就労機会に深刻な影響が出るため、在留外国人が不法就労状態に陥らないよう雇用主側が適切に管理することが、外国人労働者の保護にも直結します。

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📋 SUMMARY

この記事のポイント

  1. 不法就労は3類型。①不法滞在者の就労②就労許可のない在留資格者の就労③許可された範囲を超えた就労。いずれも雇用主が助長すれば不法就労助長罪(入管法第73条の2)の対象。
  2. 2025年6月の厳罰化。改正入管法により法定刑が「5年以下の懲役または500万円以下の罰金(併科あり)」に引き上げ。両罰規定(入管法第76条の2)により法人も同時に罰金対象。
  3. 「知らなかった」は原則通用しない。入管法第73条の2第2項が明文で規定。ただし「過失のないとき」は処罰されない例外がある。無過失立証には在留カード確認の記録が不可欠。
  4. 外国人本人は三重の制裁。刑事罰(入管法第70条)+退去強制(強制送還)+上陸拒否期間(原則5〜10年)。自ら出頭して出国命令制度を使えば上陸拒否期間が1年に短縮される可能性あり。
  5. 確認体制が命綱。採用時の在留カード確認(有効期限・資格種別・資格外活動許可・番号失効照会)と記録保存、在留期限更新時の再確認、留学生の労働時間管理が過失なしの立証に直結。
  6. 発覚時は弁護士への即時相談が最優先。逮捕後72時間以内の弁護士関与が処分に最も大きな影響を与える。証拠の保全・過失なしの主張・量刑軽減に向けた早期対応が不可欠。

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主な引用元:出入国管理及び難民認定法(入管法)第19条(在留資格に係る活動)・第70条(不法在留・不法残留等に対する罰則)・第73条の2(不法就労助長罪)・第76条の2(両罰規定)・第24条(退去強制)、出入国在留管理庁「本邦における不法残留者数について(令和7年)」、出入国在留管理庁「在留カード等番号失効情報照会」システム、警視庁「犯罪インフラ事犯 検挙状況の推移(令和5年)」、守谷市「農業を営む皆様へ(STOP!不法就労)」、技能実習法第10条(欠格事由)、毎日新聞「不法就労助長の容疑者を再逮捕 農業法人役員/茨城」(2026年4月15日付)、日本経済新聞「不法就労通報報奨金制度 茨城県」(2026年4月)、共同通信「不法就労通報、茨城県が報奨金」(2026年2月)、PROTRUDE「【2025厳罰化】不法就労助長罪と罰則」(2025年12月)

工藤辰浩
執筆者

工藤 辰浩

リーガルベスト代表 / 弁護士保険ミカタ正規代理店

リクルート在籍中に「世の中の負を解決したい」という想いを抱き、2017年に東京で弁護士保険代理店リーガルベストを創業。以来8年間で400名以上のお客様の弁護士保険相談に伴走。多くの弁護士セミナーへの参加、30名以上の弁護士との交流を通じて培った知見をmomegoto.jpで発信しています。監修弁護士様も募集中です。お気軽にお問い合わせください。

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